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バービーのdiesixxのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
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グレタ・ガーウィグはビッグバジェットのミュージカルコメディでも堂々たる作品が撮れるのか、とかなり驚いた。懸念されていたケン=ライアン・ゴズリングのキャスティングもこれ以上にないほどのハマり役。可笑しくもやがて悲しいケンの存在をこれ以上にないバランスで演じ切った。
1幕目のバービーランドの日常を見せるパートも、単なる世界観のセッティングに終わらず、しっかり面白い。デュア・リパの曲で踊る場面、一生見てられる。
リアル・ワールドが、バービーにとってのディストピア、ケンにとってのユートピアとして対照的に映り、その後のバービーランドに影響を及ぼしていくというシナリオも面白い。ケンをマンスプレイニングの罠にかけて、バービーたちの洗脳を解いていく場面は爆笑しつつも、身につまされる。ちょうど最近『ゴッドファーザー』見返してたから、ギョッとしちゃった。
最終的にマチズモが男たちも追い詰めていくのが悲惨。ケンダムランドを取り上げられて、ベッドで泣いてるケンに私も泣いた。どんな人間であろうが、周囲に軽んじられる環境が、いかにその人を傷つけて、心を摩耗させていくか。全ての人に気づいてほしいが、自らの自尊心が身の丈に合わないくらい満たされている時って、なぜか周囲を見くびってしまうんだよね。気をつけよう。自分の自尊感情を周囲ともシェアできる人間になりたいものだ。
本作の前提にあるのは『2001年宇宙の旅』だが、もはやタイトルすら知らない世代があふれている現代日本の観客に、このアナロジーがどのくらい通じるのかな。もし妻と観に行ったら「あのシーンはね」とマンスプレイニングしてしまうこと確実なので、一人で見に行ってよかった。
あとは作品のメッセージが、ほぼほぼセリフだけで訴えられていて、後半絵的な面白さが減衰していくのも少し気になった。10年後、20年後にどんな見方をされるのか、その時代のマイルストーンになるであろう作品。
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