ツクヨミ

バービーのツクヨミのネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

色彩豊かなセット美術とコメディの中に紛れる風刺とパロディ.そして多様な視点が交わるグレタガーウィグの意欲作。
グレタ・ガーウィグ監督作品。これまでフレッシュでリアルな女性映画を綴ってきたグレタガーウィグがバービー人形の映画を手がける、唐突で意味不明な驚きが先行したがやはりグレタガーウィグの最新作ということで見に行ってみた。
まずオープニング、ワーナーのロゴからいきなりピンクでスタッフクレジットの背景が真っ黒で鳴る不穏なBGMにんっ⁇と戸惑う、なんか聞いたことあるなーと見てたら夕方のアフリカンなイメージに"2001年宇宙の旅"まんまやないかーい!!ってツッコミいれたくなりまくる。明らかにパロディとして構図もまんまなんだが、実はおもちゃの歴史的変遷をバービー人形の登場というインパクト大な大事件で見せたうまいパロディモンタージュを見せる仕様に拍手したくなった。この時点でうまいパロディとメタ視点にテンションがぶち上がる。
そして本編はバービーとケンという生きる人形しかいない一種のユートピア世界を眺めていく、人間じゃないから死ぬこともないし楽しいパーティーやバカンスで毎日どんちゃん騒ぎの日々を送るという非現実の楽しさを享受させる。そこに極彩色のゴリゴリ美しいセットビジュアルとエグいほど人形世界な美術が組み合わさる至高の映画内世界が構成、そんな世界でのミュージカル的ダンスシークエンスにはわりかしクラクラさせられた。
しかし主人公であるマーゴットロビーバービーが死を認識してからは一転、ユートピアを抜け出しいろんな疑問を人間世界に見つけにいく話へ展開。今まで普通だと思っていたことが偽りで現実世界がいかに苛立たしく偏見や苦悩に満ち苦しいのかを体感するのはさながら"マトリックス"のよう。まあ本作いろんな視点が満載すぎてなかなかに困惑するのだ、女性.男性.古いものと新しいもの.資本主義などいろいろな裏テーマが出現しては消えどんなシークエンスにも思考が高まる風刺を見せていく。シンプルなストーリーはバカバカしいほどのコメディなんだが、そこには見えて仕方ない裏テーマがごまんと存在しているのが今作の肝かと。
なのでそこを認識し楽しめるかどうかで評価が一気に変わる作品なのは間違いない、コメディとしてけっこう笑えるようにはなっているが派手なラストが待っているでもなく個人の内面が少し変化し"さあこれからが本当の始まりよ!"と言われているみたいなグレタガーウィグ的life goes on...エンディングに感動できるかどうか。やはりグレタガーウィグ監督の視点は結局変わらないし、だが今までほぼ女性視点の物語を語ってきた彼女がこんなにも多様な視点で語るようになったと考えると素晴らしい成長か。だが個人的には前作までの直球な視点固定のほうがエモーショナルで好きだったな。でも今作も良い感じに好きなのは確かだぞっ!。
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