セサミオイル

バービーのセサミオイルのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.0
アンビバレンツの塊ですね。
応援したくなったりされたり、シンプルなのに超複雑、しょぼいのに高貴、究極的に浅いかと思えばゴリッゴリ思考の底なし沼に引きずり込まれたり。オツムの足りないブロンドガールの象徴だった彼女が菩薩感出してきたり。
スリービルボーズくらい情報量があり咀嚼にえらい時間がかかりますし、禅問答のような問いかけがサラサラーっとたくさん出てくるので考察も大変です。
しかし裏表のないスカッとした気持ちの良い精神に基づいた素敵な映画ではあります。

アメリカでバカ売れのようなので考えてみました。
とにかく間口が広く普段映画館行かない層がごっそり観に行ってただのファンシー映画かと思いきや意外にも2023な仕上がりに面食らって映画館行かない層の間で口コミが広がったんじゃないかと踏んでます。それらと普段映画館行く派が合わさって記録的な大ヒットとなったかと。ビリーアイリッシュの功績も大きいでしょう。

ずっとちょっと面白くて、ずっとちょっとつまんなくて、ずっとマーゴットロビーが見れる映画。
本筋、世界観、おおまかなストーリーは10歳未満を対象にしたようなお話に感じました。しかし、それなのに!?散々この映画について語り、1夜明けた後もこの映画の事が頭から離れません。
この映画について考えてると「Less is more」という言葉を思い出しました。何もない事はとても豊な事という考え方です。
主役のマーゴットロビーの地球的美貌が霞んでしまうほどケンの存在が大きい。
ケンは可哀想なくらい馬鹿なのです。男ってホント馬鹿だよね!という一般論を遥かに越えた宿命的馬鹿なのです。ケンに職業を尋ねれば「ビーチ」と答える。しかしケンはビーチが何か知らないのです。
ここまで浅いと逆に見てる方が底なし沼の深さまで引きずり込まれます。
人間ってなんだろう、自我ってなんだろう、これって悟りの領域!?そんな風にこっちが考えさせられてしまうのです。

テーマが多岐に渡りそれぞれのテーマに沿ったメッセージがミルフィーユ2段重ねぐらいレイヤーが重なって一気に押し寄せてきます。
幼児向け映画の皮を被った哲学書ですね。