ゆかちん

バービーのゆかちんのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.4
面白かったし、良い作品やなと思った!
全力コメディ。ブラックコメディ。
でも、すごく鋭い作品。

フェミニズムというか、女性の話のようにみられるかもしれないけど、性別関係なく「こういう役割・〇〇はこうあるべき」という固定観念とか周りや世間からの圧力から解放されていいんだよっていうメッセージのように感じた。

ピンクでメルヘンで可愛い世界観。
だけど、その実、すごい角度で人間史の問題の核心をブッ刺してる鋭い作品だなとも笑。
最近の女性監督が関わる作品て、こういう問題点をブッ刺してくるのが多くて凄いね!
演出とかは可愛かったりオシャレだったり。
だからこそ余計にその鋭さに愕然とする。
同じ女性としては嬉しい!





ピンクに彩られた夢のような世界「バービーランド」。
そこに暮らす住民は、皆が「バービー」であり、皆が「ケン」と呼ばれている。
そんなバービーランドで、典型的なバービー(マーゴット・ロビー)は、ピュアなボーイフレンドのケン(ライアン・ゴズリング)とともに、完璧でハッピーな毎日を過ごしていた。
ところがある日、彼女の身体に異変が起こる。困った彼女は世界の秘密を知るヘンテコバービー(ケイト・マッキノン)に導かれ、ケンとともに人間の世界へと旅に出る。しかしロサンゼルスにたどり着いたバービーとケンは人間たちから好奇の目を向けられ、思わぬトラブルに見舞われてしまうーー。


★冒頭

冒頭から尖ってた。
『2001年宇宙の旅』のオマージュを用いながら、バービー人形の登場以前には女の子たちは赤ちゃんの人形で遊ぶしかなかったことが語られる。
これをみて、あ、これって、やっぱ、赤ちゃんのうちから女の子は“母になるための準備”と言わんばかりに赤ちゃんの人形で遊ばさせられてきたってことなんか…と思う。

私、幼稚園前とかそれくらいの頃、赤ちゃん人形で遊ぶの疑問やったんよな。
というのも、自分も赤ちゃんと変わらんのになんで赤ちゃんの人形で遊ぶねん、て感じたというか笑。実際、私の母はあんま赤ちゃん人形で遊ばせようとは思ってなかったような。
それに、リアル赤ちゃんて、人形とは違うやん?赤ちゃん人形でお母さんごっこ遊びしたって、リアルはこんな大人しくはないぞと笑。
それなら、戦隊モノとかリカちゃんとかの人形で空想の世界を作る方が楽しかった。
それに、赤ちゃん人形て可愛さとか中途半端やねんな……これが一番の原因かも笑。
それなら、可愛いフワフワなぬいぐるみの方が自分より小さい存在の面倒をみたい!ていう感覚にはなれた。
…といった記憶が蘇った笑。
我ながら可愛くない女の子やなw

で、そういう赤ちゃん人形しかなかったところに憧れを抱けるようなバービー人形が登場し、女の子たちは自分がなりたいものになる!という意識を持つことができた…という。

私はバービー人形は遊んだことない…てか、あまり売ってなかった気がしたので馴染みがないけど(存在は知ってたけど、私の感覚的に可愛いとは思えなかったwやっぱ美的センスは日本人やからねw)、めっちゃ色んな種類があるねんな!

確かにバービーは女性解放にもなったけど、その一方で、最近では、「これが女性の理想」みたいになってフェミニズムを50年遅らせたと言われるように。
そういえば、ブックスマートでもそういうこと言うてたな。

それにまた驚き。
確かに人形遊びしてたけど、これが理想とか憧れとかそこまで思ったことはなかったから。漫画もやけど、こんなんあり得へんって、て、思ってたから笑。
そりゃ、芸能人とかモデルさんとか、こういうスタイルになれる人もおるんかもやけど、こんなん非現実でしょ、と笑。
我ながら可愛くない女の子だなw

…とまあ、こういうところで、バービーを知らない人にも、バービーの功罪について知ることができるのも興味深かった!


★鋭い表現

バービーランドはとてもメルヘンで可愛い。
バービーのおもちゃよく知らんけど、知ってたら色々面白いんやろうね。

で、途中までは予想してた話。
でも、人間界に行ってからは、「わ、そういう切り口…!」となった。

つまり…
現実の世界へとやってきたバービーが観たものは、バービーランドとは真逆の世界。
バービーはセクハラや侮蔑の言葉を投げかけられるし、バリバリ働いているのは男性ばかり。女性の大統領は誕生しておらず、バービーを販売するマテル社の役員には男性しかいない。。
バービーを助けたのは、マテル社の秘書でマーゴットバービーの持ち主であるグロリアとサーシャの母娘。
バービーが死について考えたりしたのは、グロリアが、母親業も仕事もうまく行ってない自分に近いバービーを想像していたからという。

一方、バービーランドではバービーのおまけの扱いを受けていたケンは、現実世界では男性優位なことに感激する。
そこで、ケンはバービーランドに戻り、男性優位社会を築く。

あーこういう…なるほど〜と思わず唸った。

ここの描写がすごいな〜て思ったのは、

①バービーたちも何も考えずに男たちに追従しておくだけの男社会に魅力を感じ、洗脳されてしまう。
②グロリアが、女性というだけで何をしても批判の対象になる現実をただただ語ると、バービーたちの洗脳が解けた。つまり、自分で思いを言えなくても、他の誰かが言った言葉を聞いてエンパワメントされるということを表している。
③ケンは、バービーランドでは一人の独立した存在としては扱ってもらえず、現実社会で“男性”という自らの属性に希望を見出す。実際にはMBAとか、それなりの実力を持っていなければ評価されることはないのに、“男性は偉い”という幻想を自分の拠り所にする。
④ケンたちはバービーにモテたいのでまんまと罠にかかる。
⑤ケンたちは自分の方が優位だと内輪で戦争する。しかし、最後はみんなでダンス。



①について
実際、この方がいいって女性もいると思う。
でも、全部の女性をこういうふうにしてしまうのは、洗脳だったとも言えると思う。
だから、男女でわけず、その人その人で出来たら一番よな。仕事も、女も出世しないとと無理矢理役職つけられても、シンドイだけで嬉しくない笑。男女関係なく、能力がある人、やりたい人がやればええと思うねん。

②について
なるほどー!と納得。自分の中でモヤモヤしてうまく言えないことをスッと表してくれるとスキッとするし、言われて「ほんまや!」て改めて気づくことあるもんね。

③について
あー…てなる。これ、差別問題もそうじゃない?白人至上主義とか。あとはナショナリズムとか。自分が思うようになってないのを周りのせいにしてる感。こういうの良くない!根本的解決ではないよ、虚しいだけやん。

④について
男性の愚かなところ?を表してて。これは女性目線やからこう描かれたのかな?
でも、やっぱりそういうもんなんかな。女性に転がされてるけど、それに気づかず自慢げにいる。こうやってみると、ウザいようなかわいいような笑。
でも、ある意味この関係が一番幸せなのかもしれないな…笑。
なんか、ケンダムを作ってやってることがガキっぽくて笑。それも男性の本質なのかな笑。ギターでラブソング聴かせて酔ったり、ウンチク語って酔ったり笑。
…まあ、なんかかわいいなとも思えるけど笑。
でも、男性のそういうところを取り上げたのがこの作品の救いだったと思って。
もし、征服欲支配欲みたいなのを強く出してたら地獄な世界になってそうやなと思うので。

⑤について
この展開について、SNSの男性の呟きで、「そう、男は闘っても最後には仲間になるんだよ。」と感じたという意見と、「そう、男は闘ってるフリをしたいだけなんだよな…」と感じたという意見があって興味深いなと。
作り手がどちらを狙ったのかはわからないけど、どちらもなるほどな〜ってなった。

…とまあ、色々感じるところはありました。
だから、ここのところをみて思っなのは、「女性で本当大変だな〜。でも、男性も大変だよな〜」と。
アランの存在がそれを示している。
アランは男性だけど、ケンダムは嫌だという。
そりゃそう感じる男性もいるよね。もちろん、女性も同じ。
アランのことをもう少し取り上げてほしかったなと思った。
男女というよりその人をみよう!ていう感じのテーマなんだから、男性側の色んな所を掘り出すのも良かったのでは、と。

ケンダムだって、なんかそれに縛られだすと自分は何かわからなくなるよね。

あと、女性優位の世界でオマケ扱いされてきたケン。
これは現実社会を反転させているんだよな。

最後、男女どっちがどうというのではなく、
「あなたはあなたであればいい」という着地。
ケンを通して、「あなたらしくいれば良い」というメッセージは良かったなと。
これは多分、バービーが自分にも言うてるのかなと。私は典型的バービーだから考えるのは苦手といいつつ、色々考えて行動した。私は〇〇だから出来ない、じゃなくて、そんな押し付け取り除いたらできるやん!て。


最後、バービーは、完璧な世界より、問題も多く苦労もする現実社会で人間になることを願う。
人間は老いるしいずれ死ぬ。現実社会は嫌なことも悲しいことも辛いこともたくさんある。
でも、そんな中にも美しいものや幸せなもの楽しいものはあるし、そこで自分らしく自分の人生を生きてまっとうすることは素晴らしいんだよ、ということを示しているようでよかった。



★俳優陣

マーゴット・ロビーは完璧やった笑。
可愛さとかスタイルも完璧やし、そこに疑問をもって自分の意思で動く賢さをもつところも。
マーゴットは同じような役が多い気がするけど、彼女はしっかり自分の主張をそこに込めて演じている。だから綺麗なだけでなく、カッコよくも映るんよね。

ライアン・ゴズリング良すぎた。
数々のかっこいい役を演じてキャリアを積み、渋みが出てくるお歳になってこの役…!
あのはっちゃけた笑顔、頭空っぽやけどピュアなところ、カッコつけて筋肉動かすところ…そういう全力で成り切って笑かせにくる演技もあるんやけど、ライアン・ゴズリングに期待していた「哀愁」が常にしっかりあった。
それがとても良かった。ケンに哀愁や憂いを内深く表しているのが、おかしみにも繋がるし、現実社会の問題も感じるし、男女関係なく彼に同情できる。
ライアン・ゴズリング声ちっちゃくない役もやば!てなりました。

MCU好きとしては、シャンチー役のシム・リウが別ケンの代表格みたいに出てきたのと、シークレット・インベージョンでヴィランのグラヴィク役を演じたキングズリー・ベン=アディルがホニャッとした役で出てたのが良かった。てか、グラヴィクと違いすぎて温度差に風邪ひきそうになるwただ、最後、自分の考えをスッと述べるところとかはグラヴィクよりになってたけど。

最後、ケンたちも裁判官とか色んな役職ある仕事をしたいというたのは良かったと思ったけど、まだまだ下からねというのは、現実社会の女性と同じ歩みをさせるのかーと少し微妙かも。

あ、アラン役がマイケル・セラで絶妙な配役やなと笑。しかし、なんでアランだけ1人なんやろ笑。

あと、ジョン・シナには吹いてもうたw
あれはズルすぎる!

バービーも、ケイト・マッキノンは適役でカッコよいし、最近の若手中心の作品でちょこちょこ見かけるアレクサンドラ・シップや、ミュージシャンのデュア・リパもいたな。

あと、マテル社のCEOにウィル・フェレル。この人も適役すぎたw


★良かったシーン

*マーゴットバービーが自分の持ち主を娘のサーシャと思ってたら、実は母のグロリアと気づくシーンの描写。
*マーゴットバービーがベンチの横に座った老婦人に「美しい…」と言うたシーン。





豪華で華やか、でも、しっかり鋭いメッセージが込められて問題提起と解放、観る人たちが自由に感じて考えるようにできてて良かった。前向きな未来に向けた作品やなと。



だからこそ、あのミーム事件は残念すぎた。。勿体無い。。
ゆかちん

ゆかちん