ひのらんげ

バービーのひのらんげのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
2.0
思考のリトマス試験紙

バービーランドで完ぺきな幸せの中で暮らしている色々な「バービー」たちと、いろいろなボーイフレンドの「ケン」たち。
あるパーティーでダンスをしているときふと、”死ぬってどういうこと?”と発言し、パーティーの全体が緊急停止してしまう。
その翌朝からバービーランドは少しずつ変化し、バービーは人間特有の悩みを持つようになって、これを解決するために人間界に住む「元所有者」の元へ旅立つ。

ーー
難しいテーマに、ジェンダーへの意識や思考力、デリカシーが試されている気がする。

映画は限られた時間で表現する必要があるので、ジェンダーを2極化して問題をある程度単純化したのだと思いますが、全体の問題構造を単純化するのではなくて、小さい問題に焦点を絞った方が良いように感じました。問題を分割し、選択して集中するともうすこし私でもわかりやすかったかも。
そう思うほどに、この作品が提起して取り組んだ問題は根強く大きかった(大きすぎた)かもしれませんね。解決済みにしてたまるか、という気力を感じました。

おじさんたちの会議で「理想の女性」というステレオタイプを背負わされて販売される標準のバービーは、結局自分の役割についてどう考えているんだろう。ラストシーンだけでは私にはわかりませんでした。
(ステレオタイプが一つ乗っかったようにも思えて、ラストシーンはびっくりしました。)

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全面にファンタジーの世界観であって、そこから滲み出る非合理、利己、歪、抑圧や嫉妬などが垣間見える様な映画かと思っていた。ら。

世界観がこんなにキャッチーで極端な(説明不要な)分かり易いファンタジーであるにも関わらず、ややこしいところでセリフが多いのが気になった。「お前らちゃんとわかってるだろうな?」と確認されているよう。
現実世界には説明過多な人はたくさんいますので、そういう意味で私の印象は現実世界寄りになっちゃいました。狂気不足。

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変化は嫌い、このままで良いというバービー。これ違和感ありで、どんなに幸福でどんなに幸せな状態であっても、その状態になれば不満や不合理が発生して変化を求めるはずだと思った。だけどこの映画には時間軸について触れていなかったので、そうか、バービーランドには多分時間の概念がないのか、と納得した。

変化が襲うバービーランドを救う、とはどういうことだったんだろう。もとに戻ったことで、めでたしめでたしだったのだろうか。これも私は消化できませんでした。

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現実世界とバービーランドを行き来するためのメソッド設計は好きでした。いいアイデア。笑。

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長い目で見れば仮想的なものだけが現実世界に残る、というのは実に言い得て妙だ。「現実」そのものの存在価値をバービーに問われているようにも思えました。
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