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バービーのHALのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.3
とても楽しみにしていたし面白く観たが、グレタ・ガーウィグ監督作品としてはかなり物足りなく感じた。

アランとマテル社のおっさんたちはあれでよかったのか?ケン以外の男たちとして物語に機能させるために配置されてると思ったのに全然上手くいってないと思った。「魅力的でもあるけどちょっと間違えると有害」な悪しき純粋さをもったケン達にライアン・ゴズリングとシム・リウをあて、キメキメのダンス対決をする場面ですごい笑ってしまったんだけど、あれがホモソーシャルの戯画として成立しているかというとなんかまだ配慮されてる気がしてしまう……SNSで必見としてよく言及されていたNetflix『ボクらを作ったオモチャたち』のバービー回が非常によくできていて(でもタイトルは「ボクら」なんだよね……というツッコミは重要)、そこでマテル社がいかに成長し分裂を繰り返していたかというのが語られていたので、ビミョ〜にふわふわとしたミソジニーギャグを連発するマテル社のおっさんも、さらにデウスエクスマキナ的なルース・ハンドラーの扱いもそれでいいのか……?と思ってしまった。だからといってこうするべきだったと言うことができないので、自分ももっと勉強していかないとなと思わされる点に関しては非常にいい映画だと思う。

クィアな存在のように描かれていたアランの扱いももっと何とかできたんじゃないかと思う。でもそれにも増して「マテル社のおっさん」の代表を演じたウィル・フェレルは本当に勿体なかった。たしかに言われてみれば『LEGOムービー』のおしごと大王は今回の役と重なると思うし、「オモチャの世界を現実側から否定し支配しようとする」姿はもっと丁寧に描かれていたと思う。そしてどうしても『ユーロビジョン歌合戦』を思い出してしまう……というのは冗談として、やっぱりマテル社としっかり組んだ映画として観てしまったな。ラストのシーンがかなり議論を呼んでいたけれど(自分も誤読していたかもしれないと思う)、あの場面が開かれているようにも見えるし、その一方で女性にとっての現実に根差しているのだと思うし、それをマーゴット・ロビーの表情が肯定しているラストカットはとても嬉しくなった。
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