ホーコ

バービーのホーコのネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

アンチフェミのフェミ映画。あぁ少し感想としては鮮度が落ちてしまいました。『私は最悪。』の主人公が知人のフェミニストと絶妙に距離を取っていてクソ分かると思ったのを思い出す。女として生きていくのは死ぬほど辛いけど私たちは何にだってなれる!!!と大声で叫ぶフェミに「言ってることはぜんぶ分かるけどそれ女子トイレの外で言うなよ」と毒づきたくなるこのアンビバレントな感情をこうやって映画に昇華してのけたグレタやっぱり大天才でしょ。凄すぎる。
雑な言い方をすればこの映画の論点は「フェミニストの理想郷であるバービーランドには太ったバービーはいるけど太ったケンはいない」という部分に集約できると思う。正直この重大なパラドクスに、私は指摘されるまで全然気づかなかった!自分の無自覚さが恐ろしい。ケンに仕事はないけれど、カッコよくムキムキでバービーのことをひたすら好きでいることが理想とされるバービーランド。そこには現実世界よりもはるかに酷い性差別が存在していて、これが痛烈なフェミニズム批判になっているという仕掛けがあまりにも巧妙で感心した。
ケンがバービーランドを乗っ取ってケンダムを興すにあたってバービーと一切争ってないのもよく考えたらすごく不自然なのにバービーの唐突な「みんな洗脳されてる!」という主張をすんなり受け入れてしまった自分の認知の歪みがまたキツい。仕事を取って代わられたのにニコニコなバービーの「こっちの方がずっと楽しいわ!」という台詞は、結局ジェンダーロールは在るべくして在るというアンチフェミのストレートな主張と、んなわけねーだろ!なフェミの皮肉のダブルミーニングになっていて、こういうところも咀嚼できると本当に面白い。
産婦人科オチは観てる時は鬱病を茶化したなら精神科に行けよ!と思ったけど、「少女たちを母という役割から解放したバービーが母になることを選択する」というちゃぶ台返し展開が最後までこの映画らしさなんだな!このオチを「母性の否定の否定」的なゴリゴリした主張と見てもいいだろうし、とにかく論点をつまみ上げては逐一笑い飛ばしているようにも見えて良かった。
フェミニスト監督のお気持ち表明映画ではなくて、フェミニズムってめちゃむず!!!って投げそうになる匙をギュッと握りしめているような映画でした。
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