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バービーのよのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.0
この映画を演る前のマーゴット・ロビーを知っていてよかった。
なにせ”The Wolf of Wall Street”で初めて彼女を観た人は皆、ほんとうに一人の例外もなく、彼女のことを人形みたいだと思ったにちがいないのだ。
そこでぐうの音も出ないほど完璧にトロフィー・ワイフを再現してみせた彼女は、つづく大作”Once Upon a Time in Hollywood”や”Babylon”でも女優の役(女優の役!なんという響きだ)を見事に演じきった。
相変わらず人形みたいな容姿だ。
私含め全員がそう思っていたにちがいない。

こうした自身へのレッテルを、マーゴット・ロビーも当然わかっている。わかっていて、この映画を企画している。そこに彼女の凄味がある。
なにせ本来いちばんルッキズムの恩恵に与れるはずの人間が、問題提起の狼煙を上げたのだ。
すでにたくさん言及されているとおり、この背景によって映画の意義も倍増していると言えよう。


そんなわけで、本作は「観なければならない映画」だった。義務感で、たいした期待もせずチケットを買ったのだが、なかなかどうして、よく作り込まれていて面白い。
バービーランドで男が台頭していく違和感を色合いで見せたり、主体性を訴える長回しの台詞が妙に沁みたりするのは、ひとえに世界観を作り込んだ成果だろう。完成されたバービーランドがあってこそ、そうしたギャップを生み出して効果的に使うことができる。
ただただピンクに染めるというわけではなく、楽曲や効果音、会話のテンポなど細部まで拘っているところも評価したい。いやあ楽曲はポップでキュートで本当に良い。

総括すれば、この御時世ホットだがセンシティブなフェミニズムという題材を、多方面に配慮したバランス感覚でもって、映像的にもストーリー的にも明快に表現している。
だから私はわりと満足して劇場を出たのだが、後ろの女の子たちはこんな会話をしていた。
「最初の“Hi, Barbie!”って言ってるときがいちばん良かった。後半はよくわからなくて寝ちゃった」
「私も。帰ってから調べないと意味わかんないって感じだよね」
製作陣は確実にベストを尽くしているが、その主張がはたしてリアル・バービーたちに届いているのか、まだまだ懸念は残るようだ。
よ