Ginny

バービーのGinnyのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.8
再上映で鑑賞。
公開当初はバーベンハイマー騒ぎでネガティブな印象が拭えず映画館に足が向かなかった…。
でも再上映で映画館で見ることができてとても良かったです。作品の良さ、音響の良さ(グロリアのドラテク炸裂のシーンの低音最高だった!)、大画面で映画に浸れる良さ…。

バービーの世界観の理解、映画での表現がとても素晴らしい!
人形っぽい関節の動きを感じた。それも人間が演じることで不自然にならない程度でその加減が絶妙。
小ネタがたくさん散りばめられてる、本気の大人の遊び心の映画作りが見ていて気持ち良い。

だからこそバービーワールドと人間界の色彩のギャップが生きる。
映像だけでも楽しめる◎

マーゴットロビーが最高。
スタイルも素直な感情表現の演技も。
マーゴットロビーがアカデミー主演女優賞にノミネートされなかったことについて、アカデミーウォッチャーなメラニーさん(@mel_a_nie_oscar)が以下の通りポストしていました。

「マーゴ・ロビーが主演女優賞候補から漏れたのを何故?と言う人が多いけど、実際に入った5人の演技見たら分かると思う。5人とも凄いですよ。加えてPast Lives のグレタ・リーも凄い。マーゴは主演よりプロデューサーとして抜群で、作品賞ノミネートでそこは評価されてるからむしろ正しいし大満足。」(1/28 9:20)

なるほど…。
映画を観た後だと、男性は受け入れ難い(認め難い)部分もあって結局バービーを推せなかった結果がノミネートに表れたのかなとか穿った見方はしてしまう。

この映画を観た男性がどんな気持ちになるのか気になった。
正直描かれていたことはリアルなものばかりで、こんなに女性が男性の前で演じてることさらけ出していいの?(洗脳を解くシーンあたり)と。
女性として見てるこちらは痛快でした。
ただ女性が男性を転がす とか 下に見てる とか そういうのが良いとは思っていないので、そこだけで終わらないでほしいなと思っていたらこの映画はちゃんと描き切ってくれて。それが良かった。

最近はXですっかりツイフェミvsアンチフェミみたいな対抗図が目立ち、フェミニズム自体の認識が誤ってしまってる気がしてそれが心配です。
女性だけを優遇したいわけでなく、女性の地位や扱いが故意に下げられてきたのは是正した方が良いよねというシンプルな気持ちで、そこの中には女性を上げて男性を下げたいわけではない。ただ、男性が過剰に持ち上げられてしまってる(下駄を履かせてもらってる)部分もあるかとは思うので、そこが正されることに対してもしかして男性は自分の利益が減らされるって過敏に反応してしまうのかもしれない。
何もかも男性を下げたいわけではないので、そこは落ち着いてほしいのと、あと、映画の中でも触れられていたと思うけど今の男女の権利がアンバランスな状態で苦しむのは女性だけでなく、男性もなのだと気づいてほしい。男性も無理しなくて良いんだよ。

太田 啓子著『これからの男の子たちへ :「男らしさ」から自由になるためのレッスン』を読んで知らなかった男性の苦しさを知りました。男性自身も生きやすくなるような社会にしていこう、の気持ちです。それはきっと、今日本で間違って解釈されてるフェミニズムじゃないフェミニズムが進めば辿り着けるのではと思う。

バービーがバービーワールドを取り戻して、ケンもケンでバービーのおまけじゃない自分に気づいて歩んでいく映画のエンディングのように。

さらに映画で素敵だったのは現実に繋がったこと。
現実が辛いからこそバービーとかおもちゃがあるけれど、、だからといってそこに逃避して現実を見ないふりすることは不健全。
バービーが、現実に一歩踏み出したのがとても良かった。どこに行くんだろう?職場かな、と思っていたらまさかの…で、映画を観てる瞬間はえぇっ!?と意外でしたがじわじわあれは最適だったのかも、と思わされました。
その選択肢にすぐに辿り着いたのか。自分は他の選択肢はこの映画にふさわしくないよねと消去していって辿り着いたんじゃ…?とか想像してる。

難しい現代の問題をぼやかさずしっかり描きながらユーモアたっぷりコミカルを両立し、音楽もよく、美術衣装ヘアメイクも最高。
この先進的な素晴らしい映画のエンディングとして、最適。

ケン役のライアン・ゴズリング。最初は歳を重ね過ぎていないか…?と気になりましたがあの映画の中のケンを表現するには確かに彼が合っているんだなと納得。
ウィル・フェレルが良過ぎる🤦🏻‍♀️
演技の呼吸が絶妙なタイミングで何しても面白くなる、天才。CEOな譲らないけどって台詞笑った。男、そういうとこだぞ!と思ったけどでもそれはそれで。全部譲って形だけでも女性優位にするのは歪な気がするから、そういう反発心は良い。
それに加えて、ルースの脱税のコメントも良かった。女性として人間として意見を言う時聖人じゃなきゃダメとかそういうのは気持ち悪いなと思うので、完璧じゃない人たちなのが良かった。

そしてなんと言ってもグロリア。
彼女の眼差し、彼女の語る言葉。どれもが自分には響いて目が潤んだ。
本当に素敵だった。とても美しかった。
美しいとはこういうこと。言葉で全て説明するのが難しいけど、バービー人形を見て外見の正解がそれしかないと自分も他人も締めつけるのではなく、バービーの外見はそれはそれで愛して、自分も周りもその人しかない外見と内面の魅力を肯定し合う。そうなってほしい。

マーゴットバービーが、美しくない!みたいに悲しんだ時のナレーション笑った。そりゃそうなんだけど。辛辣(褒めてる)。
華やかな外見を持つ白人女性の女優さんのキャリアが心配な世の中(正しく評価されるのが難しい、持たざる者に譲れ的な?)で、下げ過ぎず美貌をたっぷり披露するスタイルは、安直に白人女優に悪役をさせておけば良いというのと違ってそこも良い。

バービー達の中で、ん?と何か引っ掛かりを感じた人がトランスウーマン女優が演じていると知り腑に落ちた。

サーシャパパ、デュオリンゴしてた?

『君たちはどう生きるか』と大別すれば近い、生きることをエンパワメントするかのような感じがした。好き。


最初赤ちゃん人形壊すのはその描写どうなの?と気にはなった。
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