このレビューはネタバレを含みます
考えてみれば、何にもカテゴライズされずに「本当の自分」を生きられている人はどれほどいるのだろう。
性別、容姿、人種、職業…あらゆる角度から「あるべき姿」を内面化して、自分自身も気付かぬうちに他者が思う自分を演じてしまっているのではないか。
バービーもまた「人間の理想」という姿を押しつけられた存在です。現実世界ではマテル社の男たちが人間界にやって来たマーゴット・ロビー扮するバービーを「箱の中」に押し込めようとするのが象徴的でした。
不老不死のバービーが「老い」に魅せられるところも良い。それはいずれ朽ち果てるというこの世に「生きる」すべてのものの根本への羨望です。その「不完全さ」を抱えることであらゆる達成や挫折に価値が生まれ、喜びや悲しみによる陰影が個々の人生を形作っていくという光景に彼女は美しさを見たのだと思います。
バービーの「添え物」であったケンが息苦しさから解放されるべく、自分を定義する別の居場所を求めて右往左往する姿もまた印象的でした。
彼は「本当の自分」とは何か?の問いに対して「ケン」という答えに辿り着く。自分を別の何かで説明することなんてできないし、それでいいんだ。