2020

バービーの2020のネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

ポップさで溢れた非現実的世界観の中に、スクリーンの外の現実社会を見事に投影し、あらゆる人の心をグサグサ刺すメッセージがこめられた強烈な作品だなぁと…見終わって息苦しくなった(笑)。

これ、バービーという題材的に女性向けのような雰囲気がありますが、むしろ男性が見るべき作品なんでしょうね。

とはいえ、最終的に男女とかそういう事では無くて、人として、より生きやすい社会になることを願う作品でもあるんだろうな…と。

ただ、あまりに現実社会が残酷な事に気づかされるというか、特に女性がしんどくなる映画になっているのではないか?とも思った。
それはこの作品の終わり方がかなりの問題提起になっているように感じたから。
バービーは笑顔で楽しくドキドキしながら行っていたけど、婦人科に行くって…
それって要するに人間になった事によって女性の生理が始まったという事だと思うけど、
それって本当に体に負担がかかる事だし、それが続いていくということで、女性の肉体的な負担を考えると、バービーに生理が来ることになったということを全面的に喜ばしい事だとは言えないのではないかと思ってしまったから。
だって多分あのバービーは生理の事を存在とか概念を知らない可能性もあると思うし、知っていたとしてもそれを実際に体験し、痛みなどの身体的な負荷がかかり続けることになった先にどういう気持ちになるのか、そこまではわからない終わり方だったから。
さらに、これはうがった見方、当事者でもないのに言うべきではない考え方かもしれないけど、どうしても妊娠出産子育ての問題に発展していくというか、生理に触れることで子どもがいなかったり、育てていない、欲しくても授かれない、欲しくもないのになんで生理があるのかと悩む女性など、たくさんの女性が抱えている問題にまで発展する可能性があるというか。
そうした、議論を呼び起こすための映画という事なのかもしれないけど、楽しい気持ちになりたくて見るコメディ映画で、より厳しい現実社会を突き付けられるってどうなの…?とは思った。
まーコメディだからこそ風刺を聞かせる意味があるというのもわかるけど。
コメディじゃなかったらもっとキツイ、ホラーとか、そっち系の作品になってるかもしれない内容。
てか、これコメディなの?
基本的にはブラックユーモアに満ち溢れた作品でしたよね。
誰かをくさしたり、自虐していたり、直接シンプルに明るく笑いをとりにいくシーンはほぼ無いような。。。
直接水は飲まなくても飲めてるとか、波乗りが出来ない、みたいなおもちゃのおままごとの延長線上の演出ぐらいなんじゃないかな。
かなり攻めた作品でしたね。


ケン=現実社会の女性が暗示されていると思うんだけど、結局、この物語の中では、ラストでも「頑張り方次第では上に行けるけど、今すぐは下の方の仕事しかできない」みたいな事を言われていたし、存在価値は認められて以前よりは向上した部分もあるけど、あまり救いがないというか…。
あと、自分は自分でいい、という自己肯定のメッセージがあったけど、ありのままの自己を肯定できないからみんな悩んでんじゃん…という迷宮に入るというか。。。
それはバービーも自分になんの能力も無いという事で悩んでいたわけで。
結局、作品の中では全く解決されていないというか。。。
イコール現実社会もそうなんだけど、映画の中くらい何か解決したり、ポジティブな答えは提示して欲しかったなぁと。それなのにああいった問題提起エンドで世の中の光も影も描いているところがリアルで残酷というか。


ラストも主人公のバービーが仮に、生理が来た事によって女性として生きていることを感じられたり、妊娠できる可能性が出来た、そういったことの喜びで、ラストあんな風に前向きになって張り切っていたと解釈したとすると、
作中に、妊娠したバービーが出ていたけど、その子は、実際に販売されたけど売れなかった、みたいなお笑いネタにされていたわけで、妊娠とかの事に関してメッセージを込めたいんだったらあの妊娠していた女性キャラクターにラストのブロックでスポットを当てればよかったのではないかと思った。
てか、なんであのバービーは人間になりたかったのか、そこがイマイチよくわからなかった。
定番のバービーだからこそ、個人の可能性を考えてしまったのかな?
バービーという概念というか、組織?としてはいろんな職業や人種、体型などの可能性があり、いろんなことを肯定はされているけど、あなたは定番、あなたはノーマル、と決めつけられるとそれはそれで息苦しいわけで、気持ちは分からんでも無いけど、、、。
人間になったという異端のバービーが生まれると、他のバービーたちも洗脳じゃ無いけど、「なんで私は大統領しかやっちゃいけないんだろう?」とか自問自答するようになって、やっぱりバービーの世界の治安とか風紀を乱すことになってしまうのでは無いか、、、とも思ってしまった。
(バービーたちが男社会の価値観にあんなにあっさり洗脳されてしまった場面も見せられてますからね。。。)

あと、最終的にラストシーン、車を降りた時にサンダルというか、ヒールを選んでいなかったというのも、あえての足元のカットを入れたということは=メッセージだと解釈したのですが、それもそれで人によっては「ヒールを履く女性は男視点、男社会に毒された人間」で、先進的な女性はぺたんこ履を履いているもの、と受け止める人もいるような気がする部分もあるというか…。
あくまで選択枝として、かかとの無い靴も履いても大丈夫ですよ、選択の自由はありますよという事ではあるんだろうけど…あそこでああいう風に見せられると何かの意図を込められているんだろうなとはどうしても思ってしまいますよね。

何をどう選択してもハレーションが起きる可能性のある世の中で、それに委縮して何もメッセージを発信しないのであれば、わざわざ映画などの作品を作る必要もないと思ったりもするけど、どこかドキドキしてしまうというか、どこかで誰かが炎上しないかな…それこそ自分のこの感想も…と思ってしまうテーマではありますね。


あと、逆に、作品の中でいわゆるおねえみたいな人もいたし、マッチョじゃない男性キャラも出てはいたけど、基本的には「全ての男がこうだよね」とバカにしているようにも受け止められる作りになっている部分もあって、そこも気になる所ではあった。

とにかく何か感想を語れば、その語る人の世の中の見方が言語化される部分があるというか、踏み絵になる部分もあるから、自分もこれを書いていて誰かに嫌われないかな…と怖くなる部分もありますね。
さらに日本だと、バーベンハイマーの問題もあったし、この作品を称賛する事であったり、観る事自体を否定する人もいるわけで…。
非常に厄介な作品だったな…という感想が一番正直な感覚ですね。。。

最終的には性別は関係ないというか、100%男性を下に描く作品では無かった所で絶妙な構成をしたなという秀逸な作品でもあるけど、やっぱり全ての人にとっては良くも悪くもいろんな現実を突きつけられる作品なのではないでしょうかね…。
そして個人的には女性がより息苦しくなる作品かな…とは思ってしまった。
現実はつらい、でも、それでも前に進む勇気をくれる作品にはなってないというか。

変な話、男女の対比や社会構造が無い分、トイストーリーのボーピープの方が、人として強く生きていく上では参考になるというか、見やすいし、勇気がもらえる作りになっているのかもしれないなぁというのはバービーを観た事によって思ったかもしれない。

やっぱり、この作品は要素が多いというか、いろんな立場の人の事について考えざるを得ない内容になっているので、少なくとも「あー!楽しかった」では済まない作品であることは間違いないです。
なので、おもしろいともおもしろくないともいいづらいというか…。
そういう意味で星は真ん中の2.5にしております。



とはいえ、バービーの世界と現実社会の行き来の仕方がむちゃくちゃだったり(説明が全く足りてないw)するようなコロコロコミック的ギャグワールドになっていたところや、今までのバービーの売れなかった失敗作やへんてこなキャラクターをいじったり、レアアイテムをいじったりするような小ネタは、バービーの事を全然知らなくても面白かった。
ケンの自虐とか、マチョイズムをいじったり、それをネタに笑いにするような演出とかもブラックだけど笑ってしまうものも多かった。
道場って!とか。でもある意味では日本の武道をディスられてる?とも感じなくもないので難しいけども。。。

ラストバトルで結局歌と踊りで仲良くなるんかいーという、ミュージカルの滑稽さを笑いに使ってるのもズルかったですね!

一番すごいのは、この内容でOKを出したバービーの会社ですかね。
マテル社すげぇ。
こんなバキ打ちにされてもOKって懐が広いなと。
ただ、劇中でも言われていたけど、完璧な見た目のバービーが、世の中の女性にストレスを与えてきた歴史があるというのは事実な部分もあるんだろうし、マテル社もそこを反省し、よりよい未来になるおもちゃ作りをしていきますというメッセージでもあるのかな…とは思う。それはお互いにとってのメリットになるんでしょうね。
原作者というか、バービーの生みの親が登場して、脱税してた、みたいなところもネタにしていくんだから…。
クリーンさであったり、意気込み、そして、これだけつまびらかにしても大丈夫という会社としての自信も感じたので、リアルに今後発売されるバービー人形やケンの人形、それに付随する家などのアイテムがどんなものになっていくのかがとっても気になりますね。



結論、人は何もかもが自分の思い通りにいくわけではないのだから、なかなか自分のことを肯定出来ない場面も多くあるけど、
それでもそうだとしても、少しでも自分の中にある自分で自分のことが好きだと思えることや認められる事、自信に繋がる何かを見つけられたり、誰かにちょっとだけでも何かを褒めてもらったり、他者に存在を認めてもらえたり、一番難しい事かもしれないけど、一番すぐそばにあるかもしれない、何か、を見つけることが人生において大切で幸せなことなのかもしれませんね。

ありのままの自分で。

でもありのままではダメな時もあって。

人生は迷宮ですね。。。

とまぁ、色々語りたくなるような作品でした!!




後で書く。
2020

2020