かじドゥンドゥン

バービーのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.8
さまざまなバービーたちが統べる夢の国バービーランド。或る日、定番バービーに異変が。死のことを考えたり、いつもつまさき立ちのはずの足がべた足になったり。修理係のバービーに相談したところ、どうやら持ち主の悲しみなどが影響したらしく、人間界に出てその持ち主の問題を解決するしかないという。こうして定番バービーは、金髪へたれのケンと連れだって、現実世界へやってきた。

バービーはまず、自分にそそがれる性的で暴力的な視線に圧倒され、また、自分たちの国とは正反対の男性社会にも驚く。他方、バービー人形を制作・販売しているマテル社の役員たちは、バービーの現実界進出を危険視し、すぐに彼女を出荷時の箱に入れて送り返そうとする。

定番バービーの持ち主は、マテル社で秘書をつとめる中年女性。彼女は、死を思い、ときには塞ぎ込み、体に老いも表われる「普通の」バービーがいてもいいと考えたが、その影響がバービーに出たらしい。彼女とその娘はマテル社の追っ手からバービーを匿い、そしてバービーランドへ誘われる。

ひとあし先に帰国し、人間世界で見た男性社会をさっそくケンが持ち込んで普及させたため、バービーランドの男女関係はすっかり変わり果てている。洗脳されたバービーたちは、人間社会同様、社会の重要な役割をケンたちに譲り渡し、彼らに媚びることに専心している。定番バービーは、自分の持ち主である女性とその娘の力を借りて、バービーたち一人一人の洗脳を解いて回った後、憲法改正の前夜に、ケンに言い寄っておきながら突き放して嫉妬させる作戦を敢行、ケンたち同士の争いが勃発した隙に、憲法改正の投票を終えて、不改正にとどめる。

かつてのバービーランドを取り戻したものの、これまでケンを冷たくあしらってきたことを自覚した定番バービーは、しょせん「バービー&ケン」であり自分はおまけに過ぎないと卑屈になるケンを慰め、ケンはありのままの自分であれと勇気づける。

最後に、バービー人形の生みの親で、国税庁による逮捕と乳癌以来経営を退いていた老女ハンドラーが現われ、自分はバービーに無限の可能性を託したのだと語る。定番バービーは、人間になりたいと願い、ハンドラーの手をとって目をつむると、おそらくはハンドラーの思い出であろう、人間の喜びや悲しみ諸々が走馬燈のように巡り、バービーの目から涙がこぼれる。

人間となった定番バービーは、ベージュの地味なスーツに身を包み、産婦人科を訪ねる。