多タロ

バービーの多タロのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
2.6
ワーナーの歴代最高興収を叩き出したらしい大ヒットタイトル。日本ではリカちゃんにお株を奪われているものの、アメリカではブイブイ言わせている彼女とボーイフレンドが実写化でどうなることかと思ったらバービーワールドなる空間と現実世界が交差する謎ファンタジーでびっくり。
日本においては原爆を揶揄する宣伝広告が炎上したものの、話題になりさえすればそれで良しとのスタンスは実にアメリカ的で、作品の空気もアクセルを踏み抜いて暴走している感が否めない。もしかすると深く考えながら観るだけ負けなのかも。



※以下ネタバレ含
どこからツッコんでいいものか判断に困る映画はなくはないものの、これはその好例。冒頭からバービーたちの住むピンクが眩しい異世界(?)でバージョンの異なる彼女らの日常の描写が始まったかと思うと、メタネタ/ブラック(+少々の下ネタ)含む胸焼けするほどのコメディの連発に思わず面食らってしまう。さらには好みの問題もあるだろうが、ファンならニヤリとさせられるのであろう小ネタを抜きにしてもマテル社内での追いかけっこはじめ、ギャグの多くがなにやら斜め上というかで空回りしているように感じられて正直薄ら寒い。
物語の中盤、元来バービーワールドでの人権を認められていなかったバービーのオマケ的存在・ケン(の一人)は現実世界において男が社会で活躍している事実を目の当たりにしたことで自我に目覚め、生まれ育った(?)世界の変革を決意。バービーワールドに戻ると男社会の素晴らしさを布教することで多くのバービー&ケンたちにあっさりとこれが受け入れるのだが、マーゴット・ロビー演じる主人公バービー含めた少数派バービーたちのその後のムーブが酷いもので、ケンらとバービーワールドを共に治めようといった折衷案を提案するでもなく、ただただ彼らを排斥して自分たちの快適な生活を取り戻すことにのみ注力している点で観ていて気分の良いものではない。
ベタな解釈ではこれこそが現実社会で女が置かれている境遇であり、女性主導社会の実現の難しさを皮肉マシマシで描いているのやもしれないが、作中ケンのみに性欲があり、バービーたちはプラトニック。ケンたちが説いた男社会の素晴らしさ=洗脳という風な見せ方はどうにかならなかったものか。終盤主人公バービーは自らの生みの親であるバービー原作者と対峙したりなんかしながら、ありのままの自分で現実社会で生きていくことを決めて物語は幕を閉じるのだが、結局ケンたちはこれからもバービーワールドで肩身の狭い生き方を余儀なくされるのかと思うとなんとも悲惨な終わり方。
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