こうん

ヒッチコック/トリュフォーのこうんのレビュー・感想・評価

4.0
午前十時の映画祭で「めまい」を予習して、いざ本丸「ヒッチコック/トリュフォー」へ。

著名な「映画術」は10年以上前にヒッチコック映画を借りまくって首っ引きで読んだけど、あんまり身になっていないなぁ。

本作はあんまり新鮮味のない内容と言えばそうなんだけど、映像と解説が一緒になっていてフムフム言いながら見ていた感じ。

個人的に楽しかったのは10人の映画監督たちが語る、”俺のヒッチコック”。
ポール・シュレイダーとかボグダノヴィッチとか若干現役感のない人たちもいたけど(笑)、ジェームズ・グレイなんて渋い人選も。
どういう基準で選んだんですかね。まぁ、デ・パルマさんには怖くて電話できなさそう…。
あと、デヴィッド・リンチにも聞いてほしかった。
あの倒錯性はヒッチコックに通底するものがあると思うんだけど、リンチがヒッチにあんまり明るくないかもしれないなぁ。
でもまぁフィンチャーの笑い顔とかジェームズ・グレイの熱い身振り手振りとか、黒沢清の「ヒッチの真似ほど愚かしいことはない( ・´ー・`)」とか、その様が良かった。
みんな映画好きだねー。親近感わいた。

多分あの中で最年少なのがウェス・アンダーソンかジェームズ・グレイか…もうちょっと下の世代の監督にも聞いてほしかったかな。30代の映画監督に。
そうすれば、ヒッチコックをいま改めて考察する、現在形のドキュメンタリーになっていたと思う。
ちょっと今”ヒッチコック映画”っていうと、クラシックになりすぎていてわざわざ言及する機会もないと思うし、先日「めまい」を久しぶりに観てその鮮烈さにびっくりしたし、やっぱり映画は”生き物”であると思うから、若い世代が”今観て継承したいヒッチコック映画”みたいな視点があっても良かった。

”映画術”刊行されてから、映画の時代は1周しているんじゃにかな。

それにしても、スコセッシ御大ね(かわいいおじいちゃん)。
そうなんだよ、何回見ても「めまい」を物語的に掴みきれないあの感じ、やっぱりそうなんですね。
それがまた魅力で、たぶんヒッチコックの手練手管が観客の深層心理に深く作用しているんだと思うな。

あとヒッチ/トリュフォーの会話で「めまい」のくだり、ヒッチがかなりディープな嗜好性を披露していてそれを受けるトリュフォーが「あへあへ」みたいな受け答えになっているのが面白かった。
言葉も通じない、旧時代と新時代の映画人をつないだ”ヒッチコック映画”。
終わったとされる映画監督と新鋭映画作家の友情に、少し心が温かくなった。
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