ShinMakita

ヒッチコック/トリュフォーのShinMakitaのレビュー・感想・評価

1.3
普段ドキュメンタリーを劇場で観ることはあまり無いんだが、ヒッチコックとなるとやはり別。客席もほぼ満席で、いかにも映画マニアといった感じのおっさんばかり。一人セーラー服の子がいて、「感心な女子だなぁ」と思い顔を覗くと、女装したおっさんだった。新宿である。


さて作品だが、正直失望。確かにヒッチコックとトリュフォーの生会話が聴けたのは貴重だが、中身にあまり目新しさがない。というか、批評的視点がないというのが残念であった。スコセッシもフィンチャーも黒沢清も、口を揃えて褒めたたえるけど、もう少し批判する勇気ってのはないのだろうか。「舞台恐怖症」という〈失敗作〉についてどう考えているのかとか、引用作品を少なく絞って、もっとマニアックな話を聴きたかった。ヒッチコックが偉大なのはもう誰でもわかっているし、作家監督と商業監督という二面性の共存など、ヒッチコックを語る上では既にファンなら知っている切り口なのである。ヒッチコックを全く観たことのない人向けにしては不親切だし、ファンには退屈だしで、どうにも扱いに困るドキュメンタリーだったな。
ただ、「めまい」における色彩力とか、「サイコ」におけるジャネット・リーのブラとか、スクリーンで見直して考察しがいのあるネタがいくつかあったのは発見だった。「映画術」は、そりゃ読み応えがあってヒッチコック映画解説書としては最高なんだけど、このドキュメンタリーを観るくらいなら、ヒッチコック作品を片っ端から観ることをお勧めする次第である。
ShinMakita

ShinMakita