イチロヲ

ヒッチコック/トリュフォーのイチロヲのレビュー・感想・評価

3.5
「定本 映画術」の製作過程を主軸にしながら、ヒッチコック作品の深淵に迫っていく、ドキュメンタリー映画。筆者は「定本 映画術」を読了済み。

ヒッチコックはサスペンス映画のクリシェを「発明」した人物。題材となる著書では、師匠と弟子の関係にあるヒッチコックとトリュフォーが、50時間にも及ぶ対談を敢行。両者の合間に通訳を挟んだ状態での進行が困難であったことが、あとがきに綴られている。

本作では、当時の貴重な映像・音声資料が満載になっており、ふたりの対話を実際の音声で聞くことができる。そして、現役の映画監督がヒッチコックの影響力を語っていく場面では、黒沢清監督が日本代表で登場する。

サイレント時代からの文脈を紐解きながら、映画術の普遍性を見いだしていくスタイル。「愛欲が原動力となり、そこから湧き上がる疑心や葛藤を恐怖の対象として描く」というモチーフが根底になっており、その極地が「めまい」であることが理解できる。
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