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アイリッシュマンのmc52のレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
3.5
贅沢な時間だった、観る側は勿論作る側も。

Netflixでなければもうこういうマフィア映画はまず作られない、160億もかけて大衆的なアクションなどではなく、3時間オーバーの映画を許してくれるのはもうネット配信くらいのものだろう。

スコセッシに始まりデニーロ、パチーノなど、実際にマフィアになる人達が身の回りに居る環境で育った人間たちが作ったものにはこれからの人は到底及ばないだろう。

これはスコセッシがマフィア映画に別れを告げる映画でもある、残念だが終わりなんだ。
フランクシーランが老人ホームで、その告白によってマフィアにさよならを告げたように、スコセッシもマフィア映画から別れを告げた。

デニーロはもう70後半の爺さんで、いくら特殊メイクで若造りしても動きは爺さんそのものだった、仕方のないことだ、間違いなく素晴らしい役者だが、ペギーの仕返しに店主を蹴るデニーロの動きはもうおじいさんの動きだった。仕方ない事だ。本当に。

主人公フランクシーランははっきり言って悪党だし、孤独に虚しく死んだとわかって、悲しいとも当然だとも、本当になんとも言えない気持ちになった。因果応報なんだけど、守りたかった娘達に心底嫌われていて、エゴだったんだな。



最初の殺しの長いカットは、音楽と共に贅沢な時間だった。
デニーロの目よ。もう悲しく寂しく悟ったような目はどうしようもない状況を表すのにこれほど素晴らしい演技はない。
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