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アイリッシュマンのマのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
4.8
再鑑賞

80年でも90年でも100年でも、人生全部の年月を無駄に過ごすきっかけというのは、"自分でその道を選ぶ"のでは無く、最初から 社会に自己が存在してる時点でもう待ち構えている。から 死に物狂いで気づけなけりゃ 老人ホームで絶望するだけ。もしくは頭を撃たれて死ぬだけ。気づいたとしても撃たれて死ぬけど。

兎に角全ては待ち構えている 殺される男の座る席は 男が入店する前から既にソコにあり、娘も殺しに向かう父の姿を半開きの扉から見つめる。魚(その位置に座るのはフランク)は既にそこにあって "買い手"を待ち構えている。ラッセルが最期に向かう扉は 当たり前だけど移動しない。従軍時代に発症した関節炎により、最終的には足の自由を失う。多分、フランクの人生は従軍した時点で というか もしかしたらそれ以前に もう 白人男性が優位的に生きられる社会の中で、「社会のシステムの空気を読み ひたすらに周りに従う」人生しか無かったように見える 結果 何かを得ているようで何も得てない。対してジミー・ホッファの人生は、フランクにとってどう見えていたのか...

ホッファに熱狂する群衆に送る目線の冷たさや、軽いノリから突然 ケネディ父の死を挟み込む空気感はかなり怖い。グッドフェローズのフリ(ガチギレ)があった上で 絶対に間接的なことしか言わないジョー・ペシも怖い。大胆にも細かくも 兎に角VFXを使いまくり、3時間30分の間 全てのカットを完璧に計算し尽くすのはもはや 編集も含め 異様に神経質っぽい というか冗談ではなく本当に狂気的だと思う。
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