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アイリッシュマンのarinのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
4.5
マフィアとして生きた男=フランク・シーラン一代記。

アイリッシュマン=アイルランドの男とは、主人公フランクのことで、実在の人物らしい。「アイリッシュマン」であることが、彼のアイデンティのよりどころであり、作品のテーマである。物語のなかで、ある重大な決断を迫られることになるのだが、その是非こそが見る人への問いかけでもある。

「アイリッシュマン」には、フランクの異なる3つの時間軸が流れている。一つはマフィアの構成員になってから成り上がりまでを描く縦の軸。もう一つは、熟年となって、懇意のマフィア・ラッセルとその妻、自身の妻とドライブしてある場所を目指す横軸その1。そして最期は、老人用のケアハウスで安楽椅子に腰掛け、すべての過去を回想する老人としての横軸その2。

やがて、一本の縦軸と、二本の横軸が交差する。のんきに見えたドライブシーンが恐ろしく緊張感を強いるものであったことが明らかになる。そして、ラストを飾るケアハウスのシーンでは、彼の生涯を貫いてきた信念が言外に語られる。

是非はあろうが、私はフランクに共感できなかった。もちろん、これは共感を呼んで感動させるために作られた映画でない。マフィアとして生きること。映画「アイリッシュマン」はあるところにある場所で、こんな生き方があったのだが、どう思うか? というあるひとつのテーゼなのだ。

マフィア映画にも明るくなく、スコセッシ作品は「レイジング・ブル」しか見てない僕でも、3時間半という長丁場を退屈することなく楽しめました。
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