ゾロ

ノクターナル・アニマルズのゾロのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.0
コレは面白い
ネタバレ無し推奨

没入感が凄くて
映画の世界にどっぷり浸かった

鑑賞後、様々な点で見事だなーと感心した

現在、小説、過去
三つの世界が描かれるが
構成、時間軸、対比、脚本、余韻が秀逸

共通点は嫌悪感で紡がれるのは違和感

先ず、オープニング
太ったおばさん達の裸体のダンス
見せ方も悪趣味極まりない

ふくよかな綺麗な身体ではなく
弛んだ贅肉の部分のアップから
アンバランスな身体を見せつける

各国を想起させる小道具をつけながら
【高揚】【喜び】【美】では無く
【嫌悪】【不快】【醜さ】【老い】を煽ってる

アートギャラリーのイベントと判明した後も
映し出されたステージだけでなく
展示台に横たわっている彼女達が見える
ポーズとは言えない…ただ寝ているような…

その周囲には、彼女達には目もくれない
ブルジョワな人達がいる
(蔑み、優位性の表現かな?)

このイベントの主催者であり
アートギャラリーのオーナー
スーザンも彼女達の展示台に背を向け座る…

この【最悪】で始まるスーザン像が
三つの世界と時間軸で見事に明かされていく

スーザンや元旦那との過去や経緯
現在の感情や状況が不明のまま
元旦那から突然、意味深な手紙と共に
小説が送られてきた

スーザンに捧ぐ…と始まる小説を読むと

登場人物は自分や娘、別れた元旦那を
連想してしまう…圧倒的なリアルに緊張感を
感じるし、過去と連動?など勘繰る

この構成と時間軸のバランスが良い
 現在パートは、ほんの短い日数
 小説パートは、長い時間
 過去パートは、断片的思い出

小説パートの時間軸が長い事と
スーザンが先の見えない物語を
読み進めているので物語の大軸となる

本当に秀逸なんだよね
読み進めていくスーザンは苛まれていく
 
 かつての気持ち
 想い描いた未来
 封印したい過去

小説から現代パートへの変換はスーザン
小説から過去パートへの変換はエドワード

現在のスーザンも小説のエドワード
どちらもその世界的孤独に描かれる

無機質な寒色の現代と自然たっぷり暖色の小説
物質的に貧しい二人と裕福な二人
満たされる思い出と満たされない未来
雨や水と乾き
強さと弱さ
後悔と懺悔
奪われた命
生と死
爆発する感情と我慢する感情
豊かな表情と能面のような表情
孤独とパートナー


場面転換の表現が印象的で画的に印象に残る
また、ラストね
そこで、終わるか!とニヤリとしてしまった
自分に性格悪いな…と感じたわ



本作の現代アートは不快でしかないが
伝えたいメッセージが不快、嫌悪なら
正確に受け取っている

現代アートとしては
直島、豊島が好きで昨年も行った

先日行ったキュビズム展、
マリー・ローランサン展も良かった

映画の中にある絵画は気になってしまう
今週は、開幕したばかりの印象派展に行く予定

混んでないと、良いんだけど…
ゾロ

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