かめしゃん

ノクターナル・アニマルズのかめしゃんのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
5.0

 メモ

・主人公の女性の両親は、典型的な共和党支持者のアッパー層で、主人公はその血統を否が応に引き継いでしまっている
・親に対する同族嫌悪や自己嫌悪から生まれるアートは真理であり、だからこそ彼女はバツの悪さを感じながらも成功を収めている

・若しくは、何処かで親やパートナーの力が働いているだけなのかも知れない
(富める者が富める者たちの中でだけ回している経済かもしれない 強烈にコマーシャルされる話題づくりとそれに支配される一般ユーザー層 
商業アートってそんなもん きっとトム・フォードはそういう事は見えているし自覚もしているはずと思う だからあーいうオープニングになる)

(芸術は、芸術に殉職したからと言って成功するとは限らない 経済とリンクしないといけない 真の芸術がその時の利害関係上でスポイルされる 
そして、後に作者が死んでしまって誰も損しない状態になってから「早すぎた天才」とか言って売り出される 誰かがそれっぽい評論を書いてしまう)

・本の中に登場する人物が、いつの間にか(巧みに)現実世界の過去のパートナーとリンクしてくる 何処までが創作なのか、現実世界に生きている主人公の精神に影響を及ぼし始める

・過去のパートナーの復讐、のように見える それは女性がその物語に強く影響を受けたことから、良く書けている事を示唆している
・反応がなければ良い文章ではない訳で、作者の意図した、「体験を作話に持ち込むことで、登場人物の魂をいつまでも忘れないように出来る」という元パートナーの哲学(ロマンチシズム)が実践されている

・元パートナーのイマジネーションというか、センチメンタリズムというか、線の細さ、弱さは、彼のアイデンティティであったし、現実世界で折り合いを付けられなかったことのキーワードでもあった 
・女性の親も彼を否定する、いつの間に主人公の女性にとってもそれが大きな障壁となってくる

・しかしそれが、数十年の時を経たときに、人の幸福という命題にとって予想外の力を持ってくること、まるでそれを証明するかのような映画上の物語構成になっている

・主人公の女性は人生の成功者であるはずだった。しかし、上記の点に於いては、主人公の女性(とその両親)は元パートナーとの間で争点となった「ロマンチシズム」に敗北した、と言えるのかもしれない

・あとこの映画の作者は、クズどもの語る、見下された者たち、の心理に対しての眼差しもある 無自覚に見下していること 見下されている者はそれに敏感である 無法者の理不尽な逆恨みだが果たしてそれだけのことと言えるだろうか?
・経済至上主義の暴力について、それがいつの日か罰せられる事を描いたのが元パートナーの小説の内容なのかもしれない そしてそれはこの世の真実を突いた真の芸術であり、たかが物語だけども主人公の心の奥底に響いてしまう事になる

・でも、お金も大事だよね、結局 とは自分も思う 悲しいけどそういう世界に生きている私達
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