監督は、グッチやイヴ・サンローランなどのクリエイティブ・ディレクターをしていたデザイナーのトム・フォード。
アートディレクターとして成功しているスーザン(エイミー・アダムス)。
ビジネスマンの夫もいて経済的にはかなり恵まれた状況であるが、心に安らぎのない日々。夫は仕事ばかりで自分に興味ももってくれない。
そんな中、19年前に別れた元夫のエドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼の書いた小説『ノクターナル・アニマルズ(夜の獣たち)』が送られてくる。
発行される前の小説には、「スーザンへ告ぐ」と。
メイドも誰もいない一人きりの夜、スーザンはそれを読み始める……
………………妻と思春期の娘と共に旅先へ向かう主人公のトニー(ジェイク・ギレンホール2役)。西部の夜の一本道。電話は通じない……
そんな中、いかにも怪しげな車と遭遇する。理不尽と恐怖………
そんな「死と暴力」的なその小説を読み、スーザンは前のエドワードには感じなかった野生を感じる。そして再会しようと…
小説を送ってきたエドワードの真意とは一体何なのか。
現実と小説は、お互いに緊張感を保ち続ける。
スーザンの現実は、その小説とリンクし、そして、元夫を捨てた過去とも絶妙にリンクする。
このリンクの心地良さたるや。
アングルや色彩、そして状況と心情。
空虚感と喪失感……
見事にパズルのピースがはまっていくような感覚。
そして、そのパズルがだんだんと埋まっていく中での、高揚と恐ろしさ……
また、芸術やファッション面でも興味深い所がかなりあり。
冒頭のアート作品の衝撃的なバトンガールたちは、過去の虚栄と現在を表現するもので、スーザンの状況を暗喩しているように思えるし、
無機質なアートや、意味深な絵画もしかり。
アートに対して熱量を失ったスーザンの気持ちもしかり。
全てのものがリンクする。
最後のスーザンの、母と似ている寂しげな瞳は、何を感じ取ったのか……
感じる事は人それぞれだと思うが、
私は、小説の中のトニーは、エドワードだけではなく、スーザンでもあると感じる。
レビューは短いが、感じて考えた事とは比例しない。