MikiMickle

ノクターナル・アニマルズのMikiMickleのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
3.7
監督は、グッチやイヴ・サンローランなどのクリエイティブ・ディレクターをしていたデザイナーのトム・フォード。


アートディレクターとして成功しているスーザン(エイミー・アダムス)。
ビジネスマンの夫もいて経済的にはかなり恵まれた状況であるが、心に安らぎのない日々。夫は仕事ばかりで自分に興味ももってくれない。

そんな中、19年前に別れた元夫のエドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼の書いた小説『ノクターナル・アニマルズ(夜の獣たち)』が送られてくる。
発行される前の小説には、「スーザンへ告ぐ」と。
メイドも誰もいない一人きりの夜、スーザンはそれを読み始める……


………………妻と思春期の娘と共に旅先へ向かう主人公のトニー(ジェイク・ギレンホール2役)。西部の夜の一本道。電話は通じない……
そんな中、いかにも怪しげな車と遭遇する。理不尽と恐怖………

そんな「死と暴力」的なその小説を読み、スーザンは前のエドワードには感じなかった野生を感じる。そして再会しようと…

小説を送ってきたエドワードの真意とは一体何なのか。


現実と小説は、お互いに緊張感を保ち続ける。
スーザンの現実は、その小説とリンクし、そして、元夫を捨てた過去とも絶妙にリンクする。

このリンクの心地良さたるや。
アングルや色彩、そして状況と心情。
空虚感と喪失感……
見事にパズルのピースがはまっていくような感覚。
そして、そのパズルがだんだんと埋まっていく中での、高揚と恐ろしさ……


また、芸術やファッション面でも興味深い所がかなりあり。
冒頭のアート作品の衝撃的なバトンガールたちは、過去の虚栄と現在を表現するもので、スーザンの状況を暗喩しているように思えるし、
無機質なアートや、意味深な絵画もしかり。
アートに対して熱量を失ったスーザンの気持ちもしかり。

全てのものがリンクする。


最後のスーザンの、母と似ている寂しげな瞳は、何を感じ取ったのか……

感じる事は人それぞれだと思うが、
私は、小説の中のトニーは、エドワードだけではなく、スーザンでもあると感じる。


レビューは短いが、感じて考えた事とは比例しない。
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