グラッデン

ノクターナル・アニマルズのグラッデンのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.1
鑑賞を終えた瞬間、大きく深呼吸。様々な意味で圧倒される作品でした。

本作は、エイミー・アダムス演じるスーザンを巡る「現在」と「過去」の時間軸と、彼女に送られてきた元夫の小説『ノクターナル・アニマルズ』の物語世界という3つのレイヤーで構成をされています。

スーザンとの別離に着想を得て執筆した元夫の著作は、彼女の過去を記憶を紐解く。そして、停滞する現在の生活に対するスーザンの複雑な感情が、作中の過激な表現から来る拒絶を上回り、作品世界にのめり込むようになります。

この点については、アート作品を駆使したビジュアルから、静かに、しかしながら着実に没入していく彼女の見せ方は強く印象に残りました。異色の経歴を持つ、トム・フォード監督らしい部分ではないかと。

また、神の目的に作品を追いかける読者=鑑賞者もまた、一見の無関係に見えた小説の描写の意図を理解を深まり、その作品の終わりに待ち構えるモノが何を指すのかに興味を示し、彼女と同様、のめり込んでいきました。

スーザン、鑑賞者の心理状態とシンクロするように(製作上は計算された)落ち着きがなく展開される物語の中で描かれる色彩をはじめとする「美しさ」は暴力的にも映り、底知れぬ怖さを感じさせました。あくまでも作品世界の出来事なのに、ミステリー、あるいはサスペンス作品を見たという印象が強く残りました。