イチロヲ

レスリング・ウィズ・シャドウズのイチロヲのレビュー・感想・評価

4.0
アメリカのプロレス団体WWF(現WWE)のスター選手、ブレット・ハートの仕事ぶりを追っている、カナダ産のドキュメンタリー作品。ショービズ界の因果な裏舞台を知ることができる、「モントリオール事件」をカメラに収めている。

ブレット・ハートは、繊細で真面目でプライドが高く、我を貫きながらヒーロー像を演じていく、ザ・プロレスラーとも言うべき人物。一方、彼が所属する団体社長は「所属レスラーは単なる駒に過ぎない」という観念をもっている、ザ・興行主とも言うべき人物。

本作では、ライバル団体WCWとの視聴率戦争を背景にしながら、より卑俗的なエンタメ路線を推し進めていこうとする団体側と、自らのプライドにより歩調を合わせることができないブレットのイデオロギー闘争が主軸として描かれる。

所詮は、人間と人間の関係。他団体との選手の引き抜き合戦が激化したことにより、「社長自身がレスラーに対して不信感を抱えていたこと」を汲み取らなければならない。中島らも・著「クマと闘ったヒト」を併せて読むと、感慨もひとしお。
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