レインウォッチャー

ガンドレスのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

ガンドレス(1999年製作の映画)
2.0
■RWと48の地獄㊼ あと1本!!
奪われた体の一部を取り戻すため、RWは大晦日までに48の魔物を倒さねばならない!奴等は地獄映画の中に潜んでいる…

□戦績
映画が好きになると、リアルタイムで体験したかったと思える作品や事件が増えていくものだ。わたしも初めての『スターウォーズ』に並んでみたかったし、『エンドゲーム』の前にMCUファンでありたかった。

この前世紀末に作られたSFアニメ映画『ガンドレス』もまた、後にも先にもなさそうな事件…いや事変(Incident)だったといえる。なにせ、本当のマジでほぼ《未完成》のまま公開されたのだから。

そこに至るまでの惨たらしい経緯はwiki等を参照いただくとして、当時を知る方々のコメントを読むだけで笑いが止まらない。曰く、映画館では入場前に「本当によろしいんですね?」と念押しされたとか、後日完成版のソフトが送られてきたとか…

今ではDVD版の特典映像(もしくは、某みんなが笑顔になれる動画サイト)でしか伝説の《未完成版》は観られないわけだけれど、確かに聞きしに勝る異常事態が確認できる。
着色が追いついていない人物にロボット(後に「キン消し」「子供の塗り絵」と呼ばれ親しまれることになる)、これが70年代のTVアニメでもかくやと思わせるコマ送り具合やコピペの数々、重量感・質感なんて贅沢品は望むべくもなく、音は絵と合わず時には放棄すらされる…という阿鼻叫喚。

ただ、声優陣はちゃんと演技しているし(しかもけっこう豪華)、たまに正気に戻ったようなカットがあったりする。このブレ、波が余計に悪酔いを呼んで、目の前がくらくらしてくる。画質が悪くてむしろ助かった…

もちろん製作・観客含めて当事者の方々にはご愁傷様としか言いようがないけれど、今となっては色々と有益なことを教えてくれる作品でもある。
逆説的にアニメーションの成り立ちが垣間見えるというか、「こういう風にできてるんだ」とか「アニメって大変なんだなやっぱり」とか、再認識することができるだろう。なんだろう、内臓出てる人を目の前にして医学の偉大さを実感する感じだろうか。

普段わたしたちの目にするアニメの数々が、どれほど丁寧に心血を注いで作られているものか誰もが実感できると思う。ちょっと質が落ちた回やミスを見つけては、やれ作画崩壊だ~なんて騒ぎたがる輩もいるけれど、いやいや『ガンドレス』を観よ、とニーチェばりに言ってやりたくなる。

もちろん今ではテクノロジー基盤も違うし、下を引き合いに出してなんでも許容するのもまた間違いだけれど、「そこに愛はあるんか?」と思い出すことは大切だと思う。
そう、地獄の先に残るのは《愛》だった…そんな振出しに戻ったような澄んだ想いを胸に、わたしは先へ進むのであった。


□倒しかた
じゃあ《完成版》はどうなのか?といえば、そもそも作品としての強度が低いことがよくわかる。
劇場版としては作画も漸くギリギリだし、ストーリーも分かりにくい(し、わかったところで何てこともない)。肝心のエンジェル・アームズの面々にしても、ほとんどが「ところでお前誰やねん」の感情のまま進行していってしまうのだ。

「健全な魂は健全な肉体に宿る」とは言うけれど、要するにそーゆーことなのかも。ただ、ポンコツメガネのミシェルはかわいいよね。


□分類
強制悟りコース地獄


□取り戻したパーツ
セル画


□次回予告(最終回)
永遠に!●●!
>>To Be Continued...