悪魔の毒々クチビル

ハード・ウェイの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

ハード・ウェイ(1991年製作の映画)
3.9
「映画は17テイクとか撮るんだろうが、俺達は1テイクしかないんだ」

売れっ子俳優が路線変更を求め役作りの為に暴れん坊刑事の捜査や日常に密着するお話。


マイケル・J・フォックスとジェームズ・ウッズが即席バディを組むアクションコメディです。
マイケルにとってはBTTF3後の初主演映画ですかね。
ジェームズ・ウッズって「ヴィデオドローム」や「ヴァンパイア/最後の聖戦」とかも主演していたので、ホラーファンからも割と知名度はあるんじゃないかな。

何となくマイケル・J・フォックス主演作が観たくなって色々探していたら、これ面白そうだなって思いまして。配信もGEOの宅配レンタルもされていなかったので、DVDを買うつもりでしたが当時のポスターをジャケットにして尚且つ昔取り上げられた雑誌の記事をいくつか掲載したブックレット付きのBlu-rayがある事を知り
そっちを購入しちゃいました。貧乏人の癖にね、そういうとこやぞ。
ただこういう懐かしさを感じる特典は凄く良いと思うので、出来れば沢山販売して欲しいよね。今作はこれが初見だから思い入れも何もないけど。

内容は正反対の二人による凸凹コンビが程よく楽しい作品なんだけど、二人の個性の主張が強くてそこが見所かなと。
ジェームズ・ウッズ演じるモス刑事はこれぞ強面って感じで、短気で口も悪いんだけどその分行動力に長けていて…なキャラを持ち前の強烈な存在感でバッチリ仕上げていました。
銃とバットを持ってギャング集団に強引に聞き込みしに行って、その一人に「ベーブ・ルースかこいつ」みたいな突っ込みされていたの地味に笑えました。

マイケル・J・フォックスが演じた人気俳優ニック・ラングは今までのお気楽な役柄イメージを払拭したがっている設定ですが、もしかしたらマイケル本人もそんな節があったんですかね。
とは言え今作でもどこか飄々としていても格好良い一面がある部分はいつも通りです。
ただ、どちらかと言うとモスの真似をしてクールぶってもいざという時にあたふたしているドジっ子要素がBTTFとかと比べると多いです。
基本的にモス刑事にとっては捜査の邪魔でしかないので滅茶苦茶うざがられていますが、恋愛沙汰になるとちゃんとニックがアドバイスする側になると言った面もしっかり押さえているのは良いね。
デートについて行って不器用なモスに代わって上手く盛り上げるも、結局はモスの短気が災いして失敗してしまいますがその時のニックの「何やってんだよ」的なジェスチャーがまさにマイケル・J・フォックスらしくて凄く好きですね。モスの部屋でバスケットボールをしれっと華麗に捌く所も良い。
因みにデート相手の娘は子役時代のクリスティーナ・リッチです。

そしてモス刑事が追っている連続殺人犯パーティクラッシャーを演じているのがスティーブン・ラングなんですが、これまた良かったんですよ。
俺は彼を初めて観たのが「ドント・ブリーズ」だったので、あれからおよそ25年前の姿を見るのはある意味新鮮でした。
何なら最初丸いグラサン掛けていたときは気が付かなかったし。
特注品のカスタム銃で撃ちまくる姿も印象的でしたが、思いの外ムキムキだったのもびっくりでした。そりゃドンブリでもあんな強いよね。
あと何故か外じゃなくて家にいる時にマリリン・マンソン並に顔を真っ白に塗っていて、気色悪かったです。(褒め言葉)
行き過ぎずかと言って薄くもない、こういう作品には丁度良いサイコなキャラでした。

終盤はニックの運転する車に乗り込むも、機転を利かせてもっとイカれたキャラを演じて逆に引かせる展開も面白かったですし、その後二人の肉弾戦もちょろっとあるのも嬉しかったです。
まさかマイケル・J・フォックスvsスティーブン・ラングが拝めるとは。
しかもニックもアクション映画経験があるお陰で、ムキムキラングさん相手に結構善戦していたっていうね。

終盤の展開が少し冗長に感じる場面があったり、モスの他人に心を開けない一面をもうちょい掘り下げた方が良かったんじゃないかと思う場面もありましたが総じて楽しい作品でした。

演技に個性と言うか、スタイルが確立されている俳優ってマンネリとどう折り合いをつけるかが難しい所ではあるんだけど、マイケル・J・フォックスの抜けた所とクールな所が絶妙に共存しているあの様はやっぱ今でも唯一無二だと思うし大好きなんだよなぁ。
だからこそもう叶わないと分かっていても、もしまだ俳優業が出来ていたら歳を取った後そこをどう昇華させていたんだろう、とか改めて思っちゃうよね。
勿論今の彼も大好きですよ。