CHEBUNBUN

クイーン・オブ・アース(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

4.0
【『プーと大人になった僕』の脚本家は鬱映画の鬼才!ここテストに出るよ】
先日、親友から『仮面/ペルソナ』を彷彿する面白い作品があると紹介されました。その名も『Queen of Earth』だ。日本では未公開の作品なのですが、本作の監督アレックス・ロス・ペリーは昨年ハードコアシネフィルの間で話題となりました。というのも、『プーと大人になった僕』の脚本を手がけていたからです。アレックス・ロス・ペリーはラース・フォン・トリアーやミヒャエル・ハネケ系の全力で不快を観客に投げつけてくる作品で有名で、毎回Rotten Tomatoesの評は批評家評こそ高いものの、一般観客からは火炎瓶が投げられているような作家です。そして案の定、『プーと大人になった僕』は、過労でやつれた男の前に、仕事を捨てるよう説き伏せ、何度も復活してクリストファー・ロビンを苦しめる鬱映画の傑作でした。そんなアレックス・ロス・ペリーの代表作に挑戦してみました。

親友が語っていた以上に、『仮面/ペルソナ』でした。精神が不安定な女キャサリン(エリザベス・モス)が喪失を癒すように親友ヴァージニア(キャサリン・ウォーターストン)の家にいき、独白をする。それを寡黙なヴァージニアが聞く。そこが思い出の別荘で、段々とトラウマが渦巻き、自問自答の洪水の中で人格が揺らめく。ただ、色彩を得たこの『仮面/ペルソナ』は、鬱映画の鬼才アレックス・ロス・ペリーの手により、ブラックホールのような闇へ観客を突き落とす。つんざくようなサウンドトラックに背筋が凍る。そして、窓越しに、まるで幽霊のように蠢くキャサリンであったりヴァージニアに恐怖を抱く。そして視点がキャサリンにあることが、自分を分かち合ってくれる人の不在に夜恐怖を増長させていく。正直、キャサリンは思い込みが酷く、それによって勝手に狂っていくのだが、それを冷酷な目で見てくる周囲の人々やパーティーでの疎外感に絶望していきます。『ヘレディタリー/継承』なんて甘口カレーも良いところ。コッ!なんて音がなくても、しっかりと怖いのです。

この手の対話によりトラウマを乗り越えようとする話は『仮面/ペルソナ』然り、『リズと青い鳥』、『未来のミライ』然りハッピーエンドに向かう傾向がある。たとえ、それがホラー要素強くても。しかしながら、アレックス・ロス・ペリーは最後の最後まで絶望のどん底に観客を叩きつけ、それでもってカッコイイクライマックスを用意する。これは2010年代最強の鬱映画作家として注目しないといけないなと感じました。そんな彼の新作『HER SMELL』が楽しみです。
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