CharlieZG

大いなる陰謀のCharlieZGのレビュー・感想・評価

大いなる陰謀(2007年製作の映画)
3.5
ライオンを率いた羊・・・サスペンスを匂わす邦題より皮肉の効いた原題訳でも良かったのでは?

9.11以来泥沼化する対テロ戦争。
共和党の支持率回復を狙ったアフガン作戦を首謀する上院議員とリークで呼ばれたジャーナリスト。
国の未来を憂いながら前線に取り残される若き志願兵。
先有望な人材発掘に勤しむ大学教授と道を見失った優等生。
この3つのシチュエーションを交互に見せながら現実の不審と不満を問い掛ける社会派ドラマ。

動きが少なく会話中心で進むシナリオは正直しんどい。特に2007年当時のアメリカ情勢が分からないと言葉も入って来ない。
一例として、貧乏学生が奨学金で大学入学すると卒業後すぐに返済が開始するところ、軍入隊すれば除隊後に大学復帰でき学資も面倒見てもらえるという優遇措置があるらしい。そういう貧富の格差も問題視している。
志しに真摯に熱意を持って向き合う若者を政治家の無謀な駒として使うことにも疑問を投げかける。

面白いのはロス記者に “撤退という新作戦は?” と向けられてアーヴィング議員が語る仮定話が、現実のバイデン大統領によって撤退した後のアフガンそのもの。

万能な政治はないから一言で “政治が悪い” とも言い切れない。
ただ一つ真理があるのは、武力衝突には何の解決もなく、保守のためにかけがえのない命を賭けるだけの意味があるのか?という事。アーネストとアーリアンのクライマックスはそれを痛々しく感じ切なかった。

トム・クルーズ、ロバート・レッドフォードもさすがの演技で、映画デビューのアンドリュー・ガーフィールドも良かったが、ちょっとした表情で魅せるメリル・ストリープの演技はやはり素晴らしかった。

時事ネタとしては過去の話だが、ジャーナリズムのあり方や未来を考える姿勢は今にも通じる課題。
良かった。


監督 ロバート・レッドフォード

キャスト
ロバート・レッドフォード
メリル・ストリープ
トム・クルーズ
マイケル・ペーニャ
デレク・ルーク
アンドリュー・ガーフィールド
ピーター・バーグ
CharlieZG

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