OASIS

ハッピーエンドの選び方のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

ハッピーエンドの選び方(2014年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

老人ホームに暮らす発明が趣味の老人が、友人の為に安楽死装置を作りそれが思わぬ評判を呼ぶという話。

コメディ3割シリアス7割くらいの比率。
笑える瞬間もあるが、その後には必ず悲劇的な出来事が待ち受けているという予感がある。
当人達にとってはハッピーエンドでも、その最期を見届ける者にとっては複雑。

老人ホームに暮らす老人ヨヘスケルの趣味は、生活を少しだけ楽にする発明品の開発。
神様と話せる電話や、薬を飲む時間を知らせてくれる装置などなど。
すぐに壊れてしまうほどオンボロだったりするが、手作り感と思い遣りに溢れていて機械的な存在のはずなのに暖かい。
老後の楽しみに没頭するヨヘスケルを見守る周囲の温かさがそれを強く支えている。

死にたいと願う親友の為、スイッチを押すと自分の判断で死を選べる装置を開発するヨヘスケル。
やれ尊厳死がどうだとか、やれ安楽死がどうだとか。
本人からすれば、周囲が手を尽くそうとすればするほど生きている事に対する申し訳無さが溢れて来て、周りの温かさが逆に死への想いを強くさせてしまう事もある訳で。
法律に触れるか触れないかだけではなく、本人の願いを汲み取ってこその尊厳だとは思うが、周囲がそうはさせてくれない。
ある意味、それを全力で叶えようとしてくれる映画の中の登場人物こそ心の友と呼べる存在なのかもしれない。

そんな中、妻レバーナに認知症の症状があらわれ、介護施設に入所する事に。
「自分じゃなくなって行く感覚」が丁寧に描かれていて、自分ではどうしようもない絶望的な喪失感に襲われる。
目の前に居る夫を無視して夫の名前を叫ぶ姿、クッキーと間違えて残飯を貪る姿。
穏やかだった表情も能面のように変化し、みるみる顔も窶れて行く。
見るのも辛い妻の姿をせめて美しいまま残しておきたいという心情も納得せざるを得ない状況であった。

全裸になる事に然程抵抗が無いのか、やけに皆服を脱いで裸を晒す場面が目に付いた。
全てをさらけ出してお互いを分かり合おうとする姿勢は、真似しないにしてもその熱い想いだけは持っておきたい。
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