ハマジン

世界の涯てにのハマジンのレビュー・感想・評価

世界の涯てに(1936年製作の映画)
4.5
事の発端(小切手偽造)に書かれた「6」という数字が、主役の男女を呪いのようにどこまでも追いかけてくる(箒売りの「6ペンス」という声、安酒場のヴァージン娘が歌う「7人の男に6回も…」)。数字の不正を犯した男の罪の身代わりに、「囚人番号」というもう一つの数字を背負うことになる女歌手。
英国領オーストラリアの女囚婚姻制(結婚と引き換えの釈放)と、将校の婚約話が交互に語られる。男も女も等しく制度にがんじがらめにされ追い詰められており、その外にはどこにも居場所がない。劇場、裁判所、女囚の機織場、安酒場、教会と、回廊/桟敷に取り囲まれた高低差のある閉塞的な空間が、そのことを強調する。「誰か窓を開けてくれないか」と繰り返す声に応える者は誰もいない。
鏡から鏡への虚像のオーバーラップ。舞台を隔ててようやく実像と見つめ合うことができても、もうすでにすべては手遅れであり、制度の内に完全に取り込まれるか(=別の相手との結婚)、死かの2択しか残されていない。男の自死の瞬間を一切画面に映さない、『夏の嵐』にも通じるサークの厳粛さ。

不倫相手の死を知って取り乱し、夫が殺したと思い込んで「今すぐ逃げてちょうだい!」と荷造りに右往左往する妻の思いがけない行動を、素早いパンで追いかけるショットが忘れられない。
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