うみぼうず

イントゥ・ジ・アビス 深淵へのうみぼうずのレビュー・感想・評価

3.5
ヘルツォーク監督が直接死刑囚へのインタビューなどを行いまとめたドキュメンタリー映画。これは非常に難しい。ヘルツォーク自身は死刑制度反対の立場とのこと、だが映画は公平に、ある1つの事件の加害者である死刑囚とその家族、そして被害者遺族へのインタビューを淡々と流す。

赤いカマロ欲しさに3人を殺害した加害者は、「自分は天国に行ける」と嘯き、死刑を行う人達や判決した人達を「許す」と言う。また加害者の家族は全くの無罪だと言い張り(明らかな物証があるにも関わらず)、彼の子を欲しがる…。状況だけみる限り、彼らの死刑はやむを得ないのではないか?と思ってしまう部分もあるのが正直なところ。体裁上 罪を認められないのかもしれないが、それにしても悪びれる風もないのは再犯も感じさせる。

ただ、よくよくみてみると加害者の親は犯罪者で家庭環境に恵まれていなかったり、被害者の家族も家族全員を何かしらの事故で亡くしていたり、学校に行けていなくて文字を読めないなど、日本だと考えられない状況が突きつけられる。そんな環境でも真っ直ぐ真っ当に生きている人もいるので言い訳にしかならないが、環境が犯罪を生むというのもまた事実なんだと思う。

やはりどんな事情あれど死刑にするべきではない、という考えもよく分かる。逆に、死刑に処すべき人間がいるかもしれない、ということも。
そこで出てくる死刑囚監房の元職員。「年金を受け取らずに退職した」という言葉が全て物語っているのかなと。
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