Kaji

明日へのKajiのレビュー・感想・評価

明日へ(2014年製作の映画)
3.6
想像より良かった。

スーパー(韓国で言うマート、日本のスーパーより大きくてデパートやイオンよりは小さい)での労働運動を描いた映画。

契約職で採用時の条件を無視した雇い止めをくらったレジや清掃の女性スタッフたちが組合を形成して不当な雇い止めにストとデモで抵抗する。

彼女たちは、シングルマザーだったり、高齢だったり、学費に苦しんでいたりとどんな条件でも働かざるを得ない弱者であり、労働条件について意見を言いづらい立場にある。

そこから「約束が違うじゃないか」と立ち上がるんだけど、この作品は義憤と不条理に立ち向かう強い人たちではなく、生身の/辛い立場にある/逃げ場のない/しかし替えの効かない人たち。

私にとっては人ごとではなかった。
ハラスメントや圧力に日々耐えているのにまだ苛む社会の惨さと、自分達の権利に気づいた彼女たちの奮闘に涙目でありました。

声を出さなければ聞こえない。声を出しても聞く耳を持たない人には聞こえない。聞こえないは「無い」。。。
そんなシンプルなことが誰かを苛んでいて、行動を伴うとたちまち逆流になる社会は人のために動いてるのでしょうか。


劇中、明らかに「ロウソク革命」へのオマージュがあります。
セウォル号事件を経て朴槿恵の弾劾に至った運動が「声を出せない人の声を聞く」、そこにある怨嗟の声と慰めの声、一緒に泣いた人、そんな風景がロウソクの火だけで表される表現力も持った作品でした。

人権についての映画で、労働運動のエンタメ化では済まないビターな質感もしっかり持ってる佳作です
Kaji

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