OASIS

時間離脱者のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

時間離脱者(2015年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

1983年と2015年、32年の時を越えて夢の中で繋がった見ず知らずの二人の男が、二つの時代で同時に起こる事件を追うという話。
監督は「猟奇的な彼女」等のクァク・ジェヨン。

夢の中で二人の男が繋がり事件に巻き込まれるという、恋愛要素よりもスリラー要素を高めた「君の名は。」的な内容だった。
もちろんラブロマンス要素もあり「前前前世」ならぬ「来世」でまた出会えますようにという時を越えたラブストーリーとしての面白さもあるし、張られた伏線を細々と回収して行く気持ちよさがミステリーの部分の面白さも味わえるという一粒で二度的な美味しさ。

1983年の1月1日、新年を迎えた瞬間に高校教師であるジファンは強盗に刺され病院に運び込まれる。
それから32年後の2015年1月1日、新任の刑事ゴヌは追い詰めた犯人の銃に撃たれて重傷を追う。
同時刻に同じ病院に運ばれ生死の境を彷徨ったジファンとゴヌは、それを機にお互いが夢の中で入れ替わってしまうという現象に悩まされる事に。
2015年の現代でホシを追うゴヌと1983年の過去でスリを追うジファンが交互に描かれて行くオープニングから人物が把握出来ていない状態でのややこしさが半端ないが、過去を赤色で、現在を青色を基調にした画面構成で描いて行く手法で混乱を見事に回避していた。
二つの時代それぞれの主人公の容姿があまり似ていない所も分かり易い理由で
「来世は東京のイケメン男子にして下さい」という程でもないが、現代の主人公の方が「怪しい彼女」のイ・ジヌクなのでイケメン度は高く、逆に過去の主人公は少し芋っぽさのあるルックスなのでその対照的な部分が見た目にも後々の展開的にも効いていると思った。

ジファンは夢の中でゴヌのいる現代の生活を体験する事で、9月に初雪が降る事や、スマートフォンが普及し始めるという32年後の未来を予言出来るようになる。
一方ゴヌは、ジファンの婚約者であるヨンジュンに似た教師のソウンを現代で見つけ、彼女が殺害される夢を見る。
独特な数の数え方や、ヨンジュンにそっくりな見た目である事からソウンがヨンジュンの生まれ変わりではないかという事は想像に難くないし「来世ではまた同じ姿であなたに会いたい」とご丁寧に語っているシーンもあるので、その部分についてはやや親切すぎるきらいはあった。
ただ、ヨンジュンを殺害した犯人がジファンの生徒カンの父親であった事や、彼が父の復讐の為警察官になりゴヌの上司の班長になっていたという繋がりはなるほど上手く過去と現在を繋げたなと思わせる所で、二人の主人公以外の脇役の関係性について明かされるタイミングも絶妙で物語の構造の理解を助けていた。

殺人犯は父親では無いと無実を訴えるカンは、真犯人を探そうとする。
一方、ジファンの生徒49名が何者かの手によって火事で死亡したというニュースを知ったゴヌは、カンの父親が容疑者となった連続殺人事件と火災を起こした犯人が同一人物であると睨む。
現在と過去の両方で、ガスマスクを付け女性の頸動脈を切って殺害するという同様の手口の犯人が現れる展開は「僕だけがいない街」を彷彿とさせる。
犯人の正体は誰なのか?という興味で引っ張って行く展開は良いが、そのヒントを出し過ぎな上に真犯人のカモフラージュも上手くないなと感じてしまった。
結果的に真犯人は同僚のペクでしたと言われても、彼が登場した時点でユンジョンに対しての目線がいやらしかったり、ジファンを良く思っていなかったりして犯人ではないかと予想出来てしまったのが残念だった。
ただ、火災を阻止し未来が変わった事によりゴヌとジファンが時を越えて邂逅を果たすシーンは赤と青のライトが同時に照らされる演出で幻想的だった。

復讐の為だけに警察官になった班長が模倣犯となっていたというのは予想出来ずに新鮮に驚きがあった。
少し気になったのは、カンの妻が殺された時に犯人に向けて撃った銃による傷が重要だと思っていたのにそれほど物語的にはキーでは無かったという事。
32年前にカンの妻が殺されるのをジファンが阻止し犯人を逃したから起こった事だが、復讐を例え過去に託したとしてもカンが自殺してしまっては、現代での手がかりとしてあまり意味が無いように思えた。

事件が解決した事でゴヌが刑事から教師へと職業すら変わっているのはどうなのかなと思う部分もあったが、生まれ変わったのなら全てがまっさらになっても仕方ないかと思う作品だった。
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