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レディ・バードのtomtomのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
3.0
保守的な田舎町からニューヨークへの進学を夢見る17歳の少女、クリスティーンの心の揺れ動きを描いた物語。

かつて苦学生だったこともあって、最初は正直、ニューヨークへの進学を経済的に後押ししてくれない母親に憤りをぶつけてばかりの主人公クリスティーン(こと、レディ・バード)には少し苦手意識もあった。しかし、話が進むにつれ、抑圧的な母親の性格や、カリフォルニアの一般的なイメージとは異なり非常に宗教保守的な色彩の強いサクラメントの街の雰囲気などに触れながら、彼女の気持ちに理解や共感が生じていく。自身の生まれ育った環境から逃れようとしながら、結局自分のパーソナリティも郷土や家庭の影響から完全に自由でいられないのだと気づく姿には、ある種の普遍的なものがあるように思う。

よく見ると、無理に背伸びをしているのはレディ・バードだけではなく、街の若者の殆どがそうだ。ゲイなのに家族に紹介するため、無理に女性の恋人を作る男性や、無理にサンフランシスコ風のリベラルを気取る伊達男。皆が環境の抑圧性に反発を感じながら、一方でそれに愛着を感じてもいる。特に地方出身者なら、そうした登場人物達の心の動き一つ一つに共感することができるだろうし、自分自身と重ねて見ることができる映画だと思う。気付かされ、思い出されるところの多い映画だった。
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