さゆ

レディ・バードのさゆのネタバレレビュー・内容・結末

レディ・バード(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

これは子供から大人への自立の物語。

この主人公・クリスティンは例えるなら形のいびつな岩で、山の斜面で色んなものとぶつかりながら、少しずつ丸く小さく変形していく過程にいる。

クリスティンは本当はポジティブな視点で物事を見る力があるのだけれど
自分に自信が持てないから、どうしてお金持ちじゃないのか、かっこいい家じゃないのかと環境に苛立ちを向けてしまう。

世の中にはそのまま帰り道がわからない大人になってしまう人もいる。
愛すべきものを愛さずにいた時にいつか味わう喪失感のことを思うと
素直さの価値が身に染みる。

また同時にこれはお母さんの話でもある。
クリスティンにとっては絶えず愛し続けてくれる偉大な存在。
しかしお母さんとクリスティンが考える「自立」には大きな差がある。
お母さんにしてみたら、自分から生まれた怪獣が社会性を獲得せずに図体ばかりが大きくなっていくのは不安で仕方がないだろう。
そしてその娘がNYに飛び出すと言い出したら反対するのも無理はない。

見送りの時まで娘の選択を肯定できず泣くお母さんの姿はあまりにも等身大で、観ている私も一緒に泣けてしまった。

結論として、私はクリスティンの青春時代を肯定したい。
何の原石でもないのかもしれないけれど、
勢い良く生きることができているのは素敵だし
何よりも帰るべき場所に気がつくことができたクリスティンの前途は明るいと感じる。

雨上がりにきらきら光っているアスファルトを踏みしめて街へ出かけていく時のような
希望を信じられる気持ちになる映画だった。
さゆ

さゆ