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リキッド・スカイのMTMYのレビュー・感想・評価

リキッド・スカイ(1983年製作の映画)
3.5
ニューヨークの夜。ファッションモデルのマーガレットの部屋に、誰にも存在を気づかれないまま静かに円盤のUFOがやってくる。どうやらドラッグによって人間の脳に放出される快楽成分を捕食するらしい未確認飛行体。とある研究者は、その成分が性行為の際の快楽成分と同じであることを発見し、同じ頃、マーガレットは自分と寝る人が何者かに次々と殺される事態に直面していくことになる…
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観賞後にTumblrでいろいろと画像を見ていて思ったのですが、「ぜひこれはデジタルリマスター画質でみなきゃいけない…」ということです…。VHSでもそのファッションやサイケでかっこいい異質感は分かるのですが、やっぱり劣るものがあるので、綺麗な画質の画像たちを見てこんなにかっこよかったのかと驚愕するレベルでした。

本作品はモントリオール世界映画祭で特別審査員賞を受賞し、カルトSF界のなかでもわりと人気のある作品だそうです。
冒頭、派手な化粧と服装の衆がクラブハウスで踊るシーンに、リビングの天井の照明みたいなちゃっちい円盤が、飛来してサーモグラフィー的なものをとばすシーンが度々挿入され、
とりあえず何が起きてるのか分からず置いてかれますが、結果、普通にふんふんみてると何が起きてるのかわからないまま終わる感じに… ただ、ほんとかっこいいことにはかわらず、意味深な部分も考え見ようとすると深みにハマりそうな、そういう面白みのある映画でした。

脳に感じるエクスタシーを餌にする宇宙人と、性に対してのエクスタシーのない女性モデルの奇妙な関係性が物語の表面軸になりつつ、
ファッション業界の、性的搾取やショービジネスの裏を皮肉るような裏の顔がちらほら。
主人公マーガレットが、自分を欲してくるすべてにヤケになって、蛍光塗料を塗りたくる独白シーンが、ある意味で映画の総てという感じがしました。

「出身はコネチカット、先祖はメイフラワー号できたの。
私に王子様が現れるって言われて。
弁護士でね。子供ができて。週末はバーベキュー。
他の王子や王女がやってきて
『おいしい、おいしい』
…退屈なこと!
だから言われたの。
ニューヨークに来て、”独立した女”になれって。
今度はエージェントの王子様がきて
薬を見つけてくれるって。
そしてウエイトレスをしながら
30,40,50まで待つの。
女優になるにはファッショナブルであれって。
そうであるには両性よ。私はデイヴィッドボウイのように両性的でしょう?
私、美しいと言われるけど
セックスで殺すの。
いいでしょう?
今度は誰?
レッスン受けるわよ、
ショービジネスへの入り方。
どうやって教授や、エージェントに優しくするか…


この作品の1番の見どころといえば、
主演の #アンカーライル が男性(ゲイ)ファッションモデルとで、一人二役をしていたこと。
まさに、セリフにある通り、その中世的な顔立ちには魅了されるものがあります。それだけでいいともいえてしまいそう。

ショービジネスで媚を売って挙げ句の果てには搾取され、偽のエクスタシーと引き換えに名声を得る。…そういう生活をするくらいなら、宇宙人に肉体を売ってしまった方が良い…。ほんとうに人間性に対して”エイリアン”なのは誰なのだろう…、そんなメッセージが聞こえてくるようでした。
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