shishiraizou

青春H セカンドシーズン 若きロッテちゃんの悩みのshishiraizouのレビュー・感想・評価

4.0

『若きロッテちゃんの悩み』。いまおかしんじの映画を、隅々まで素晴らしいと思ったのは何年ぶりでしょうか。 青春Hでの前作『ゴーストキス』は、ワンアイデアを、いまおか監督の人柄のかわいらしさで押しきった、局地戦的な映画でしたが、これは、堂々とした本格派。

『若き~』では漠とした人恋しさ、なにか座りの悪いさみしさを、ちいさな動力として、行動や人との関わりが推進されてゆきますが、けして大仰なところに連れていくわけではない。(なんだか、ここもさみしいところだね。)でもいかにもな閉塞感の誇示はなく、どこか風の通りがいい、不思議な感触がある

(青く広大な空や、若い年齢での死、のような、観念的/神話的なイメージには行かずに、たかたがの、舗装された道路や、コンクリの家屋や、建物のまにまに見え隠れする海をめぐる、自動車や鉄道で、1日1日を着実に生き進めてゆく、あいまいに繋がる関係をつづけて積み重ねながら。)

一カットごとに、彼らや彼女が、どう感じて、どう行動するのか、ワクワクしながら見つめた。ハコ書き的でなく、一カット一カット、人の感情や関係が微細に変転し更新され、推移してゆくことへの感情が自分の身体のなかに累積してゆくことの豊かさを感じて、映画の原初的な愉しさを示された気がした。

ラブシングル中田の、両拳を前に握って小さくダンスをする、楽しんでるよ、という動作は、これまでの「ぱぱんが、ぱん」的な、映画的だよ、神代だよという秘密結社的傑作素とはちがって、たしかに人生に地続きの、生活と幸福がフィットしていないことの、明るい切なさがあったとおもった。
shishiraizou

shishiraizou