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ふたりの友人のakrutmのレビュー・感想・評価

ふたりの友人(2015年製作の映画)
4.1
秘密を抱える売店の女性モナに恋してしまった男性クレモンとその親友アベルの三角関係を通じて揺れる男の友情を描いた、ルイ・ガレル監督の長編デビュー作品。ルイ・ガレルは俳優としても監督としても好きなので、数日前に存在を知ったMUBIで本作を見れたこと自体が嬉しい。ちなみに、ルイ・ガレルは現在まで3本の長編を監督して自ら出演しているが、すべてアベルという役名である。

映画のテーマは男どうしの友情(会話の中にも出てくるように、ブロマンスのような関係ではない)で、それが三角関係によって揺らぐという話である。とは言っても、モナに盲目的な恋をしてしまったクレモンがモナに拒絶されアベルに相談する日から3日間(だと思う)を、ほぼ3人のやり取りだけを濃密に描いているので、今までの二人の友情がどんなものなのかなどの背景は全く描かれず、二人の台詞からしか推測することはできない。そこにあるのは熱く男くさい友情ではなく、外見的には対照的な、でもどこかエキセントリックな性格の二人のどこか一歩引いた友情である。そういう意味で現実味のある関係を、時にはユーモアを交えながら表現しているので、見る側は自然と映画に入りこめるし、ラストシーンでのアベルのホワイトライなども納得できるのである。

紅一点のモナもどこか謎めいた女性であるが、二人の恋心を掴んでしまう魅力(ゴルシフテ・ファラハニの魅力と言っていい)だけで説得力十分である。特に、ワークリリース(日中に刑務所の外で労働に従事するための一時外出)中で他人との交流を頑なに拒んでいたモナが自分を一気に解き放って(やけくそとも言えるが)見せたバーでのダンスシーンが見せ場である。個人的には、ルイ・ガレルと言い合う怒った表情も好き。

そしてやっぱり役者だと思うのはクレモンを演じたヴァンサン・マケーニュ。彼のダメさと精悍さを併せ持った演技が素晴らしい。個人的にはめっちゃダメ男のヴァンサン・マケーニュが好きだけど。
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