【第64回カンヌ映画祭 監督週間】
『逆転のトライアングル』などの鬼才リューベン・オストルンドの二作目。カンヌでプレミアされ話題となり、東京国際映画祭では監督賞を受賞している。
オストルンド作品では一番ストレートに辛かったかも。他の作品に比べると構造がシンプルで分かりやすい。毒っ気はやはりこの頃から変わっていないけど。
アフリカ系少年たちが白人とアジア系少年たちをじわじわと追い詰める話。怖いし辛いし胸クソ。
やはりテーマは「不寛容」であり、ゆりかごはグリフィス『イントレランス』の引用だろう。
何度もやっているのだろうその追い詰める手口は慣れたもの。飴と鞭を巧みに使い分け心を蝕み金品を奪う。アフリカ系少年たちは「金品を奪う」が目的だろうが、被害にあう少年たちはそれよりも「心が蝕まれる」ことに憔悴しきってしまう。
大人たちは出てくるものの、直接の干渉は誰一人としてしない。「大丈夫?」と言って名刺を渡す男もいるけれど、ことが起こっている最中は傍観者でしかない。助けを求めた飲食店の店員たちも一応対応はするが真剣には受け取らない。会話を終えた後に裏で何事も無いかのように談笑しているのが怖い。
でも実際その場にいたら自分も手出しできないと思う。手出ししたとしても最後の女性たちのように的外れになる可能性だってある。
人種と格差を複雑に絡めながら、自分ではどうしようもない悲劇に巻き込まれていく様を残酷に描いた傑作。もう二度と観たくないけどオストルンド作品では一番しっくりきた。
ただ、アフリカ系少年たちは展開上必要だったとしてもロマの音楽隊の必要性が分からなかった。オストルンド作品全体に言えるけどマイノリティの扱いがちょっとどうかなと思うことが多い。そういう風にブラックに描いていいものだろうか。