監督の才能を感じた映画でした。
「フレンチアルプスで起きたこと」「ザ・スクエア」「逆転のトライアングル」と、”気まずい映画”を撮り続けているリューベン・オストルンド監督。
これらの前に撮られた作品が、この「PLAY」で、2011年製作の映画。
初期の作品なりの荒削りな印象を受けましたが、監督がやりたいことの本質、最新作「逆転のトライアングル」まで一貫している考え方の「軸」を感じることができました。
■ 話の流れと作風
映画はショッピングモールから始まり、黒人の少年たちがアジア系・白人の少年たち三人に因縁をつけ、携帯電話を奪おうとします。
手法は典型的な「良い警官/悪い警官」の手法。暴力的に接する集団の中で、一人だけがアジア系の少年達に対して優しい。「お前らは悪くない。俺が話をつけてあげるから」と優しい声を掛けますが、そもそも全て申合せ済みのグルです。
アジア系の少年たちは、なんとか逃げようとし、道行く中で様々な大人に助けを求めますが、関わりたくないっていうのと、そもそも子どもたちの問題でしょってことで、相手にしません。
そんな中で事態は段々とエスカレートしていき、次第に「大人たち」も無関心ではいられなくなってくる・・という流れ。
雰囲気的には「ザ・スクエア」をもっとリアルに、救いようのない形で描いています。
■ 考察
この作品では、少年グループ同士のいざこざを通して、移民問題や格差、人々の無関心にフォーカスを当てています。
映像的にも、客観的な(傍観者的な)視点を貫いているところが特徴。
冒頭ショッピングモールでのもめ事も、少年たちの視点からではなく、屋内監視カメラからの俯瞰映像のような形で淡々と映し続けます。
この映画、そもそも主役がいないこともあって当事者たちの主観に立つことは最後までなく、まるで人間観察の記録映像のような映像で「あなたがそこにいたらどうしますか?」を問いかけてくるようです。
■ この4作から見えたこと
4作に通じるのは、どれも後味の悪い終わり方をすることで、それは「簡単な解決策はないんだよ」ということなのかも。あえて分かりにくいエンディングにすることで、観た人それぞれに解決策を考えさせるスタンスを貫いているのかなと思います。
この荒削りな作品が監督の伝えたいことの骨子で、
ここからどうやったら大衆に受け入れてもらえるか、賞レースに勝てるか、興行収入が挙げられるかっていう観点で”肉付け”していって、三作ができてきたのかな、と思いました。
余談:
ほかにも何本か観たい映画があったので、配信サービスJAIHOに登録して視聴しましたが、結構面白いです。NETFLIXやAmazon Prime Videoがシネコンだとしたら、こちらは徹底的にミニシアター系ですね。
数ヶ月間は、色々観てみようと思います。
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2023年 Mark!した映画:125本
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