Inagaquilala

スタテン・アイランド・サマーのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.5
アメリカの新学期は夏休み明けの9月。大学に進学するハイスクールの最上級生にとっては、8月はやや感傷的な最後の夏休みということになる。この作品の主人公はバーバード大学への進学が決まっている高校生ダニー。地元で過ごす最後の夏をプールで監視員のアルバイトをして過ごしている。

相棒はメガネでちょっと太めのフランク、子供の頃からずっと一緒に遊んできた仲だが、彼は地元に残ることになっている。なので、ふたりにとっては仲良くつるむ最後の夏だ。

彼らの地元は、ニューヨークとはフェリーで結ばれているスタテン島。住人に警官と消防士が多いと言われているこの島は、ニューヨークの目と鼻の先にありながら、緑が多く残り、ちょっとした田舎の風情。そのスタテン島のプールを舞台に、ひと夏の青春群像がコメディタッチで描かれる。

はっきり言って、かなりのお気楽映画で、ちょっぴり哀愁も含みながら基本的には若者たちのファンダンゴ(バカ騒ぎ)が描かれる。アニメや特殊効果も取り入れながら、映像でも遊び心を見せる。とくにスタテン島の女王、マフィアの娘のクリスタルがプールに現れるシーンは、かなり弾けた映像になっていて、楽しい。

さて、ダニーとフランクのハイスクール最後の夏、焦点はもっぱら好きな女の子との仲を如何に進展させるか。フランクはアジア系の双子の片割れレイチェルを狙っている。ダニーは小さい頃に彼の子守り役でもあったクリスタルにぞっこん。しかし彼女には強面の父親がついている。

毎年、ダニーとフランクがバイトするプールでは、夏休みの終わりにはパーティーが開かれることになっているが、今年は彼らの上司チャックがパーティーを開かせまいと邪魔をしている。ふたりにとっては共に過ごす最後の夏だけに、どうしてもパーティーを開催したい。仲間と謀って、「必殺」の計画を進めるが。

高校最後の夏というと、ジョージ・ルーカス監督の出世作「アメリカン・グラフィティ」を思い出すが、テーストはまるで違う。「サタデー・ナイト・ライブ」の出演者が顔を揃えているらしく、かなりのコメディ調。それも結構ブラックジョーク的なものもあり、とにかく笑える。とくにパーティーの邪魔をする上司のチャックのキャラクターがかなりヤバい。

たぶん、ネット放送だけのオリジナル作品だと思うが、こういうお気楽映画もたまにはいいものだ。劇場公開映画では味わえない、軽さが魅力。何も考えずに青春の感傷にひたりながら、笑い転げる。たまにはそれも悪くない。
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