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残酷で異常の海のレビュー・感想・評価

残酷で異常(2014年製作の映画)
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ふと窓の向こうを見ると、言い争いをしている男女が居る。二人にとってはきっと大したことのない、いつも通りの喧嘩なのだろう、もう何度も繰り返したやり取りみたいに休む間もなく言葉が飛び交う。ほんの少しだけ、大人の一歩分くらいだけ離れたところに、小さな女の子が立っている。恥ずかしそうに俯いて、時々なにかを探すように顔を上げ大きな目をきょろきょろさせる。通り過ぎていく人々は、迷惑そうに離れながら、ふと女の子に気がつき目を逸らす。あの子が探していたものは自分を連れ出してくれるヒーローでももっと素晴らしいものを見せてくれる夢の世界でもなくて、自分と同じ目をした誰かなんだろう。ママが悪いともパパが悪いとも思っていない。むしろ周りを通り過ぎる人々の方を嫌だと思っている。状況は違くともわたしもそうだったよでも大丈夫だからねと、そこまで突っ走って考えてから、こんなこと考えているわたしだってあの子にとっての顔の無い悪だ、と思い直して、だけどすぐにこうやって心を殺そうとするわたしも、本当は最低なんだと思う。経験は良いことだけど、それに執着して新しい経験ができなくなることは駄目なことなんだろう。心から憎い人を何度も繰り返し殺していれば、そのうち「ごめんなさい」と思うようになるのだろうか。一度目はなんてことなかった罪も何度も繰り返し犯していれば、そのうち「もうやめたい」と思うようになるのだろうか。わたしが絶対に許してはいけないと思っていることを簡単に許してしまう人が居る。その逆もあるんだろう。わたしたちが許したり許さなかったり選んだり選ばなかったりしたものって本当はどこにあるのでしょうか。わたしにはどんなことが起きても許し続けたいひとが居る。それはわたしにとったらすごく真っ当なこと、でも誰かにとったらとんでもない、残酷で異常。
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