うにたべたい

長髪大怪獣 ゲハラのうにたべたいのレビュー・感想・評価

長髪大怪獣 ゲハラ(2009年製作の映画)
3.7
NHKの番組中のデザインコンテストでグランプリに選ばれた怪獣を映像化したもの。
制作会社はNHKで、みうらじゅんが脚本担当しています。

DVDで視聴したので、テレビ放映版よりも尺の長いディレクターズ・カット版を観たはずなのですが、それでも21分という短編作品です。
番組の企画で作られたお祭り的な作品ですが、監督に田口清隆氏、製作総指揮に樋口真嗣、また、音楽に伊福部昭の曲が使われているなど、気合の入ったメンバーが携わっています。
その分、特撮技術は素晴らしく、特撮は一般上映作品と見劣りしないできになっていると思います。

美術面は文句ないのですが、シナリオはやはりバライティ企画という感じがありました。
ところどころで芸能人のおふざけが挟まり、ラストも次回予告につなげるすっきりしない終わり方になっています。
特異なのはゲハラというギリギリなネーミングの怪獣にとどめて、シナリオは真面目に作った方がよかったのではと思いました。
シナリオライターの照れ隠しなのか、せっかくギャラを積んでタレントを起用したので見せ場を作る必要があったのかわからないですが、個人的には、本格的な怪獣特撮とバラエティ的なおふざけが入り混じっていて、若干ちぐはぐしたような気がします。
20分一本のみのバラエティ番組内の企画なので、それであれば問題ないできだと思いましたが、役者を揃えて、シナリオをちゃんと練り直せば、120分の劇場版映画として見れるレベルの作品だと思いました。

ゲハラは、細くて長い毛に覆われた怪獣で、襲われて生き延びた人はなぜか毛を毟られているという特徴があります。
そして、隠すように覆われた前髪をかき分けた先には、落ち武者のような弱点の頭頂部が現れます。
グロテスクな外見を持っているわけではないのですが、全身毛むくじゃらのくせに前髪はスカスカで、全身から臭気を放つという設定に加え、見た目も風呂に入っていないオタク青年のような不気味さがあります。
せっかくの前髪を攻撃されて、前から後ろへ大分きてしまっている前頭部をオープンにされた上、そこを狙われるとか、見る人が見ると泣いてゲハラを応援しそうですね。
山奥で引き困り生活をしていたのですが、無理やり地表に引きずり出され、働いたと思ったら臭いと文句を言われ、しかもハゲをいじられる。
悲しい宿命を背負った怪獣だと思います。

面白かったです。
ラストがキレイではなかったのが残念ですが、本作は本作で楽しんで観ることができました。
ラストは蛇足な感じを受けましたね。終わるべきところでキレイに締めてくれればよかったのにと思います。