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モンタナの風に抱かれてのクレセントのレビュー・感想・評価

モンタナの風に抱かれて(1998年製作の映画)
4.2
彼が案内した崖からの壮大なモンタナの景色を見下ろしながら彼女は言った。貴方のお母さまが羨ましいわ。本当よ。だってあのお年になれば迷いなんてないだろうし、下せない決断もない。それに過去の間違いや迷いも今となっては大切な懐かしい思い出。その安らぎが羨ましいわ。そこで彼が口をはさんだ。年を取らなくても安らぎはあるさ。彼女は反論した。人生を振り返る年にならなきゃ無理よ。僕は時々安らぎを覚えるんだ。いつ? 彼女が即座に聞いた。朝起きてその日の仕事を考えるときや家に帰ったときだ。そう。私は朝起きても不安だらけ。そういうなり彼女はため息をついた。あの子をすべてから引き離して連れてきたのよ。でも努力するほどに壊れていくの。壊せばいいさ。彼が言った。それはできないわ。どうして? 彼が聞いた。彼女はそれには答えず彼の気持ちを聞いた。ここに連れてきたのは正解だと思う?僕にはこたえられない。そうね。あの子が答えてくれるわ。そうだ。彼女は強い子だ。誰かに似てね。彼のその言葉で、彼女は改めて彼の眼を覗き込みながら微笑み返したのだった。この物語は大都会の荒波にもまれて身も心もすり減った女編集長が、モンタナの草原で出会ったカウボーイのやさしさと壮大な草原に生きる人々との交流によって、その張り詰めた心が少しづつ溶けていくうちに、いつの間にか心が彼に寄り添うようになっていく過程を丁寧に描いていく。R.レッドフォード自身が監督と主演をして、都会と自然を対比させながら都会に生きている人々に優しく語りかけている。そう、もっと肩の力を抜いて。気持ちを楽にして、とね。
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