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ダウンサイズのmasatのレビュー・感想・評価

ダウンサイズ(2017年製作の映画)
3.5
勿論、見かけ通りの映画ではなかった。
マーベルだかDCだかの流れのキャラ映画(アントマン?)と思いきや、我らがアレグサンダー・ペイン、一味違う。
小さくなって、さあ大変!?なんて言う
生やさしいモノではない。
なんか生々しいし、エンタメ特有の躍動感がない。
でも、それで良いのです。名匠の仕事だった。

極力、社会性と日常に根差した空想科学映画。だから根底には、サステナビリティとダイバーシティが敷かれ、しっかりと先取りしている。

小さいサイズになって、大きな未来、いや、大きな今、今の充実を目指しながら、さあ、ゴールはどこへ?

ダメでノロマなアメリカ人に寄り添うイヤミでスノッブなオーストリア人は、義足のヴェトナム人をコキ使う。やがて、船乗りドイツ人がジョインする。
マット・デイモンの左右に配置されたクリストフ・ヴァルツとウド・キアーというドイツ野郎が圧巻で、そこへ投げ込まれるホン・チャウも素晴らしい。

そんな面子が醸す世界は、あまりにシニカルで、興行的にコケるのは当たり前だろう。逆に、それだけの世界を見せる訳なのだ。

コンラッドの、船に乗って、闇の奥のノアの方舟を見に行き、またノコノコ還ってきた。世界は終わらなかった・・・ようだ。
かくしてこの野心作は見事に失敗した訳だが、グロい表現で世界を映し出し、失敗作特有の(忘れられない)輝きを放った。
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