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教祖誕生のumihayatoのレビュー・感想・評価

教祖誕生(1993年製作の映画)
5.0
伊丹作品を感じさせる風刺・皮肉に、北野作品の乾いた感じとギャグが合わさってなんとも大好物。

とある小さな新興宗教団体のインチキな内情を描いたものであるが
何が面白いって、もはや営利団体となってしまっている教団の内紛が描かれ、「団体存続の為の商売としての信仰」を主張する管理職側と、「純粋な本物の信仰」を主張する若者教祖側の対立という話になっていくのだが
"宗教"や"神"や"信仰"という言葉を"音楽“に変えると、「バンドを売る為の音楽と純粋な音楽とは?」みたいな売れなくて悶々としてるバンドと事務所のあるある話にそのままスライドできてしまうところ。

若者新教祖達の誠実さと純粋な姿勢が、多くの人を惹きつけるのは確かで、それは教祖だろうとバンドマンだろうと同じ事だろう。
「やってるうちにその気になっちゃう」ところも一緒だ。

しかしそれを"大衆的に仕掛ける"のがその本人か別の誰かなのか、その相性がどうなのかはとても難しい問題であるし、そもそもわざわざ大衆的にする必要があるのか?という事と、大衆化を狙った時点で何かの商的な作為が介入する可能性が大なわけだから“大衆化そのものが一種の宗教詐欺みたいなもの"というのが僕の持論です。

純粋さがそのまま大衆化する場合には教祖本人よりも表現に誠実で純粋な“仕掛け人"が居たりするという事もあり、そういう現場を僕は“いいチーム"と呼びそういう現場で仕事をしたいと思っている、この作品でいう玉置浩二の様な心持ちであるわけですが
彼は最終的に凶行に走ってしまう。
純粋さと凶行は繋がりやすい。
何事もバランスです。気を付けます。
だけど誠実じゃない事は許さないぞ。

誠実さと純粋さを失った人達からはどうせ人が離れてくだろうと思っているけど最近どうでしょ。
表現者すら今作でいう北野武と岸部一徳側になってやしないか。
影も形もない物にマジになれる人間の素晴らしさ故の滑稽さよ。

まぁとりあえず宗教団体は世界宗教も含めて全部無くなればいいなと思ってまーす!
あとサントラ素晴らしすぎる
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