坂東玉三郎主演の泉鏡花原作『高野聖』の舞台を映像化した映画を見ました。泉鏡花の幻想的で日本的な美を堪能できる作品でした。
泉鏡花の「高野聖」は読んだことがなく、これを機に読んでみました。複雑な語りの構造であり、その複雑な語り事態が物語の舞台となる山の奥深さを表現しています。深い山に歩を進めるとそこは人間を拒絶するような残酷さがあります。しかしそこで幻想的な美しい女と出会います。その女との妖艶な物語が進んでいきます。泉鏡花の作品の面白さを改めて知ることができました。
そしてそれを舞台にしたこの作品は、泉鏡花の世界を見事に再現しています。玉三郎の幻想的な美しさが、同時に幻想的な残忍さを生み出します。しかもその怪しい美しさはある種の恐怖をうみだします。ただしそれだけではありません。それが村の歴史と重なり合って、日本社会の真実を描いています。見事としか言えません。
主な出演は坂東玉三郎、中村獅童、中村歌六。泉鏡花の作品の美しさと原作を忠実に再現しようとした舞台の努力がよくわかる映画でした。