さく

ルームのさくのネタバレレビュー・内容・結末

ルーム(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 誘拐された少女(17歳)が誘拐された男との間に子供が出来て、未だに監禁されている…という悪夢としか思えないシチュエーションで始まるのだけれど、何とか脱出を試みて成功する。
 
逃げられたとは言っても、一生取り返しのつかないトラウマを抱えてしまった親子。とりあえず、少女(といっても既に7年監禁されているのでいいオトナの女性)の母親の家に身を寄せるも、父とは既に別居して別の男と住んでいたり、前向きに生きようとしても、消し去ろうとしても消せない過去、異常な環境で育ててしまった子供の育て方…など、悩みは尽きずに、結局、自殺未遂…。

 何から何まで絶望的な物語のようなのでけれど、子供(ジャック)を演じるジェイコブくんがあまりにも可愛らしくて、何とか観てる方も救われる。
 
どんどん心を病んで行く母親に対して、子供らしい適応力でどんどん「外の世界」に馴染んでいくジェイコブくん。
 
いつしか、「部屋(ルーム)へ行こう」と母親に提案する。「部屋」とは、長年閉じ込められていたあの部屋。二人で部屋を訪れて、ジェイコブくんは「こんなに狭かったっけ?」と。ここはまあ外の世界と比べて元もと居た部屋は何と狭い世界だったのだろう…といった、まあベタな演出。ここから先が凄くいいシーンで、衣装ケースとかシンクとか部屋の中にあった色んなものに「さようなら」を言うジェイコブくん。ここは冒頭のシーンで、毎朝起きると、この狭いルームの中にある色んなものに挨拶して一日が始まるってシーンからつながっている。ここで「ママもさようならを言いいなよ」と言われるのに「さようなら」と言えない母親。このシーンが物凄くいい。あっさり「さようなら」と言える幼い子供の「先を見て生きていこう」という純粋な意志と、どうしても過去を振りきれないでいる母親。
 
ともかく、母親(ブリー・ラーソン)と子供(ジェイコブ・トンブレイ)の演技が素晴らしく、名作です。
さく

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