psychocandy

ルームのpsychocandyのネタバレレビュー・内容・結末

ルーム(2015年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

素晴らしい作品でした。

まず、物語の構成が素晴らしい。
拉致監禁という、非常にショッキングな題材を扱っているものの、この物語では、そこから脱出して通常の社会生活に戻った後に焦点があてられています。

本作にあるような衝撃的な事件では、例えば報道においても、監禁からの奇跡的な脱出(救出)ばかりが話題になり、その部分だけの感動ドラマを切り取って「一件落着」となりがちなところ。その後の社会生活における「再生」に向けた苦悩や葛藤にこそ、語られるべき真のドラマがある、ということをあらためて認識させられました。

生まれた時からこの狭い部屋が「世界」の全てであった5歳のジャック君。その汚れなき彼が、初めてみる「新しい世界」に戸惑いを感じながらも、母親との強い絆のもと、2人で困難を乗り越えていこうとする姿に、どうしようもなく心揺さぶられます。

拉致監禁に関する描写において、過激なシーンが抑えられているところにも好感が持てました。なるべく鑑賞のハードルを低くして、より多くの人にこの物語の真の感動を伝えたい、という制作側の想いが込められているような、そんな風に感じました。

同じ拉致監禁モノでも、悪意の象徴のような問題作「ファニーゲーム」(1997年)と対極にあるような、極めて良心的な作品であり、一人でも多くの方に観ていただきたい傑作です。
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