Imperi

ルームのImperiのネタバレレビュー・内容・結末

ルーム(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

”へや”を出てトラックの荷台から広大な空を見た瞬間、あの四角い天窓しから知らなかった彼にとってそれはまさに宇宙だったにちがいない。そしてあの瞬間、彼は本当の意味で”生まれた”と言えるのではないだろうか。

人を傷つけ、人から自由と時間を奪うことが最も罪深いことだと自分は思う。被害者だけではない、被害者と関わりのあった全ての人からその人との時間と可能性を奪うこと。奪われた時間は戻らない。

ジョイはしかしその中で唯一の希望を手にした。それがジャック。この運命の中でしか会うことのなかった子。理不尽な状況が世界の全てであるこの子のとても純粋な気持ちに彼女は支えられていたことだろう。

奪われたかけがえのない時間は戻ってこないが、彼女はジャックとかけがえのない時間をその中でつくりあげたことを、その時間の長さとも言える、彼のいうパワーのこもった髪の毛から感じ取ることができたのではないか。「よくないママね」というジョイに「でもママだよ」と普通に返すジャックは本当に素晴らしい子だが、それはひとえに彼女が愛情をもって大切に育てた結果だ。奪われた家族との時間も、これから作り上げていくしかない。

あの部屋にふたたび訪れるシーンにぐっとくる。大きな世界を知ったジャックには、もうそこは彼の世界の全てではなくなっており、彼の成長を感じさせる。そして残されていたものたちへの別れ。さらに「ママもへやにお別れして」と促す。あの瞬間、ジョイにとってあの部屋は「過去」になったのだと思う。辛く苦しい思いをした時間に別れを告げ、これからはジャックと二人であたらしい人生を歩いていく決心がついた。

二人連れだって歩いていく後姿。まだこれから先幾多の苦難があるだろうけれど、きっとあの部屋から決別した二人なら乗り越えていくだろう。そう感じさせた。

レオがやさしい。あのさりげない距離感の縮めかたが良いねぇ。あのインタビュアーはカス!
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